続・自転車旅行(スペイン・ポルトガル編)5-6

1990年8月14日(1)

鍼灸術の先生の一家はアルガルベに出発して、もうモンサントにはいない。一緒に仕事をやろうと勧められたが、まだ旅が続けたくて断った。惜しいような気もする。折角のチャンスを無にしたのではないのか。

僕も15年間くらい独自に指圧を続けてきている。背中を触ればどこが悪いかすぐわかるし、効果的な指圧を患者に施す自信はある。しかし、旅への誘い、放浪への憧れが強くて、ポルトに留まって指圧師の仕事をずっと続けて行けるかどうか自信がない。しかし、もう旅をやめて残りの人生を自分の為にだけではなく、他人の為にも役立てなければいけないんじゃないかと時々思う。

先生は去る時にポルトのアドレスと電話番号を僕に渡し、「来たくなったらいつでも来てください」と言ってくれた。「ミツバチを飼って(僕の本当の職業は養蜂家)山の中で静かに暮らすのも良いでしょう。しかし優れた指導者は皆、他の人の為に全力を投じていますよ」と、先生は彼のトレーラーハウスの中で語った。

元来、僕の家系は医者なのだ。祖父の代まで信州の飯山藩の侍医を続けた家系である。血は争えず、東洋医術や漢方、薬草学には大いに興味をそそられる。

人間にとって一番大切なものは健康だ。いかなる強健な意思も病気には弱い。健康でなくては、十二分な活躍は出来ない。それは若い時に結核を患って、はっきりと悟った自分の事である。

欧米では鍼灸、漢方薬、マクロバイオティック等の東洋医術がブームである。これはまだ当分続くと思われる。1960年台から始まった事だ。ヒッピーの時代のZENやヨーガの流行に始まる大きな流れである。そしてこの流れは段々と大きくなりつつある。未来は結局、宗教の見直される時代、西洋が東洋に学ぶ時代になりつつある。西洋文明の行き詰まりと、東洋が世界をリードする時代となるかもしれない。

ヨーロッパの核家族化は日本よりもずっとひどい。老後を心配する必要のない若者たちは無気力だ。ナショナリズムに燃える(日本の若者はこの限りでないが)、アジアの若者の方が活力に満ちている。先進国では心因性の病気が蔓延している。そして自殺者、精神病患者も圧倒的に多い。自分の悩みを本当に話せるような人間関係が出来ず、一人悩む人々が増えている。ニーチェの予言した機械文明が本当に到来し、人々は言葉を失い、そして愛情に飢えている。

これからは宗教が流行るだろう。それも時代にマッチしたタイプの宗教だ。言葉を失った人々は、テレビだけ見て過ごすよりは宗教のある生活の方がずっとリラックスできる事に気づいて、信仰を始めるだろう。

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