アフリカの旅 11-2

私は怪我しているし、いつまた彼らの世話になるかも知れないので、ホテルのスタッフとの人間関係は気を配った。食事の後は必ずボーイに20シリングのチップを与えた。荷物を減らすために不必要な物(傘、ラジオ、シュラフ、カメラ等)を少しずつスタッフの一人一人に上げた。

私の様な客は滅多にいないようで、マネージャーが「貴方は、ここに来るいかなるヨーロッパ人とも黒人の金持ちとも違う(私は金持ちと思われてるらしい)」と言った。ヨーロッパ人は文句ばっかし言うし、アフリカの金持ちはヨーロッパ人と同じでケチだと言うのだ。確かに見ていると、ヨーロピアンもアフリカン・リッチもボーイやスタッフを人間扱いしてない。物でも扱っているみたいだ。しかしアフリカ人は陽気で人がいいのか、その事に対して怒りを面には出さないでいる。

私はボーイの一人一人の名前を覚えた。握手もする。時には彼らが図に乗ってビールを飲ませてくれと言う事もあった。夜の9時に私は夕食をとる。もう客はいない。そういう時は彼らに1日の労をねぎらってビールを奢ってあげた。この様にして、私に対するサービスは他のいかなる客よりも良くなった。だからと言ってスタッフは私生活には干渉して来なかったし、私もそれを避けた。少しは私も利口になったのだろう。

11-2食事の後、金を払う。ボーイはつり銭を探しにどこかへ行ってしまい、ひどい時は10分ぐらい帰ってこない。つり銭くらい用意しておけばいいのにと思うのだが、この事は町の食堂でもマタトゥでも同じだ。しかし、時間はかかるがつり銭は必ず持ってくる。こっちはそれまで煙草をふかしたり、茶を飲んだり、手紙を書いたりして待っていればいいのだ。つり銭は用意したくても出来ないのだろう。すべてポレポレである。私は、インドやアフリカでは当たり前の事だと思って諦めている。ローマに行ってはローマに従えだ。早く済ませたい時は小銭を用意しておく事だ。つり銭はよく誤魔化されるから、よく数えてから受け取る。

朝、階下のレストランに朝食に行くと客で一杯だった。ほとんどがナイバシャ湖へヒッポ(カバ)を見に行く若い白人のグループだった。私のテーブルに若い黒人の男が来て座っていいかと言った。この場合、この国では相手が男娼という事もありうる。しかし、こんな朝早くからはやって来ない。他に空席が無かったのだから、下心は無いと見た。黒人青年は苦労せずに育った者らしく、伸び伸びとした感じがした。

少しすると白人若者の一団が去り、レストランの中はまばらになり、黒人のグループと私達だけがまだ食事が出来ないでいた。普段少ししか客が来ないので、厨房の中がどうやらパニック状態になってるようだった。うちの店と同じだ。私は思わず笑ってしまった。しかし黒人青年は時計を見て、もう20分は待たされてるんだ、一体どうなっているんだ…とイライラしていた。他の客も同様だった。あまり遅くなるとカバを見れなくなる(早朝がいいらしい)ので、時間を気にしているのだ。この国に来てアフリカ人が時間を気にしてイライラしているのを見たのは、その時が初めてだ。

ここの朝食は、最初にボーイがオーダー表を持ってくる。そこには、パンをトーストで食べるかどうか、ゆで卵の茹で加減をポシェットにするかミディアムかハードボイルドか、オムレツにするか、ソーセージとベーコンのどちらにするか、その他いろいろというような事をチェックしてからボーイに手渡すのだ。

一番最初に、フルーツの盛り合わせとマンゴージュースがテーブルにセットされる。それを食べ終えると、オートミールと温い牛乳が出される。それを食べ終えるとメインディッシュ(玉子料理とフライドベーコン、ソーセージの類)とパンが出てくる。そして最後に、ティーまたはコーヒーのセットが出される。徹底的に英国スタイルなのだ。こんな具合だから、朝食と言えども客が多ければ厨房の中は忙しいわけだ。

ジョン(その黒人青年の名前)は「ベリーバッド。信じられない!知ってますか?ナイロビの殆どのレストランはバイキングスタイルだと言うのにここときたら!このレストランは酷すぎる」と憤慨する事しきりだ。ポレポレの国ではあまり見ない光景なので、私は少しばかり驚いた。

彼はビジネスマンで、会社へ行くのに7時過ぎには家を出ると言う。話を聞いてみると、ナイロビのエリートサラリーマンは日本並に多忙のようだ。それでウィークエンドは彼女と一緒にドライブするのが息抜きなのだと言う。
「彼女は今回連れて来なかったの?」と聞くと、
「まだ寝てる。でも起きたかもしれないな」と、その人の良さそうな黒人青年は屈託なく笑った。私は自分のワイフの事を思い出して、一緒に笑った。

そのうちやっと食事が来て、私達は日本やアフリカの事を話しながら食べた。

「彼女とは結婚するのか?」と聞くと
「私もそろそろ結婚しなきゃいけないと考えている」と彼は言った。
「結婚したら何人くらい子供を作るかね?」と聞くと、
彼は笑いながら「まあ、2人か3人だね。それ以上は無理だよ。学費とか、お金が掛かるからね」と言う。

少子化というのは世界的現象だが、アフリカではどうなのだろうと思った。ソマリアから来たあの娼婦のハリマにしても、レイクビューホテルのアンにしても、アンの弟も2人か3人でいいと言っていた。私が「子供がいないんだ」と言うと、彼等は心底同情してくれるのだった。

アフリカ人は子供の事になると夢中で話す。どこの国でもそうだが、アフリカ人は特にその傾向が強いのではないかと思う。子供や妻を愛す、そして愛される。これ程人間にとって幸せな事は無いだろう。


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