アフリカの旅 15-1

1998年6月5日

朝は爽やか、と言うよりうるさい位の鳥の声で目が覚めた。テラスの椅子に座り、タバコに火をつける。なんという違いだろう。私は、後にしてきたケンバシ・ホテルの事を、ナイバシャの町の事を思った。まるで別な世界にいた。

黒人は、ここでは働いている者しかいなかった。あとは白人客が少しだ。ただ、私には馴染めない。すべて作られている。整い過ぎている。キャンプなら下川の家の周辺の方がずっとマシだと思った。

朝の散歩に、再びキャンプ地の外の市場に行ってみた。歩いても15分くらいだ。マタトゥやトラックが通り過ぎた。通学の子供も見かけた。してみると、この近くに学校があるんだなと思った。

でも、学校に行ける子はそんなに多くない。義務教育と言う制度もなく、英字新聞は就学率が下がったと報じていた。まだアフリカの国々は前途多難という感じだ。

HOTELと書いてある看板を目にして中に入る。ホテルとは名ばかりの掘立小屋。ケロシン・ランプがぶら下がっている。少年にチャイとマンダジを注文して食べた。あのクソ不味いレストランよりずっとマシだった。あのレストランなら、この10倍は取る。チャイとマンダジ、20シリング払うと3シリングの釣りが来た。客に挨拶すると、「ジャンボ!ブワナ」という返事が来た。かみさんが1歳くらいの子供を連れて入ってきた。子供はびっくりして私の顔を見ている。私が笑うと、皆が笑った。

店を出てから、やたらに派手なミュージックをガンガンやってるミュージックショップに入ってみた。若い兄ちゃんがいた。「ケニヤで今一番ナウい奴を」と言うと、「これが良いよ」とかけてくれたのが面白いサウンドなので買った。

アフリカではCDは今一つで、カセットテープが全盛なのだ。CDの姿も、CDプレーヤーも見当たらなかった。すり切れたような音で、「こいつ、大分聞いた中古じゃないのか」と聞くと新品だと言う。この国じゃどこまでが新品だかわからない。テープは全て開封されているからだ。もっとも、サウンドを聞かなきゃ買う訳にはいかないんだから、その方がマシだろう。

黒人青年が薦めてくれたのはAURAS・MABELE&LOKETO(アウラス・マベルとロケット)というバンドで、リンガラミュージックではBONGO-MANと並んで有名なバンドだ。彼は他のを掛けたがらなかった。こっちはチョイスしなければならないから、あれこれ聞いてみた。彼が選んだのは他にTHEM・MUSHROOMS(ゼム・マッシュルーム)、これはルオー・ポップスの有名なバンド。ルオー・ポップスには他にオチング・カパセレとフィンデ・コンデが有名。私はキスム(ルオー族の土地)で彼の歌を何度も耳にした。他にキクユのコフィー・オロミデが大人気だ。他に教会音楽でWACHUNGAJIを選んでくれたが、ゴスペルの事はわからない。聞いてみると割と良いので買った。その他にカンバ・ゴスペルのLUNGUL NANGANGを自分で選んで買った。

テープ5本で600シリング、こいつボッてるなと思ったが色々相手してくれたから喧嘩もせずに買った。普通で70シリング位からある。

市場を後に、再びキャンプ地に戻る。別世界の入り口では、あの軍服を着た老人が大声で「ハウ アー ユー」と言って笑った。白人社会とネイティブの社会、私には二重の世界がそこにあるのが面白かった。両方の世界を行ったり来たりするあの楽しみだ。私にとってのフィッシャーマン・キャンプはそんなものなのだ。

湖岸を歩いていると、漁師が海老を網で獲っていた。私はまさか昼飯にこれを食うとは思わなかったが、例のボーイが「イエス、今日のスペシャルはリトルフィッシュのフライとトマトスープでス」と言ったのでそれを頼んだ。しかし出てきたのは小魚でなく、エビのむき身のトマトスープだった。「これはリトルフィッシュじゃなくてシュリンプじゃないか?」と言うと、彼はヘッヘッヘッと笑った。どこまでも人を馬鹿にしたような嫌な奴だったが、料理は美味かった。

タスカビールを飲んでからオフィスに行った。「金曜から日曜日まではバンガローは特別料金1800シリングいただきます」と言うのでドミトリーに引っ越すためだ。1800シリング(3600円)、こんな掘立小屋にそんな大金を払えるかってんだ。私の泊まっている高級ホテルでさえ800シリングだというのに。

15-1ドミトリー(400シリング)に行くと、あの老人がいた。別の若い青年もいた。彼の家はドミトリーより20メートルくらい向こうにあった。これなら夜でも一応安心して寝られそうだ。とにかく、ドミトリーはキャンプ地の端っこにあり他のキャンパーが近くにいないので、夜の事を考えると心配だった。

私は青年と老人に煙草を勧め、一緒に吸った。青年はワコ、老人はサミーと名乗った。しばらく話してから私は部屋に入り、リュックをベッドに投げ出し少し眠った。暑かった。腰の痛みは酷くなるばかりだ。


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