アムステルダム日記 5

1998年6月18日

雨が降っていた。

今日は海洋博物館に行く事にした。ホテルから見える所にあった。双眼鏡で見たら字が見えた。オランダ海洋博物館と書いてあるから間違いない。絵の仕上げをして10時頃にホテルを出た。

傘をさしてテクテク運河に沿って歩いた。12.5ギルダーだった。帆船の模型だけでも素晴らしいコレクションだが、外には本物のフリゲート艦(17世紀の帆船)も浮かんでいて中が見られた。帆船マニアには必見のミュージアムである。私も帆船が好きだし、海洋冒険小説のファンであるから、ここのミュージアムは胸がわくわくした。

フリゲート船の中には本物の大砲が備えてあり、いつでも撃てる感じだ。マストの太さも、私の想像を超えるほど太かった。こんなマストが折れる風の力とは、どのようなものなのかと思った。ヤードやリギン、様々な索具が蜘蛛の巣のように張り巡らされている。揺れる船のヤードの上での作業は命がけだった事が良く分かった。梶の大きさもさる事ながら、テイラーバー(舵棒)の大きさと太さにはびっくりした。嵐の時となれば、10人くらいの人間がしがみついて押せるようになっており、全てのスケールが私の想像していたものより大きく、頑丈に作られていた。

ちょうど昼時で、キッチンではコックが竈に薪をくべて料理していた(人形ではない、ここのスタッフ)。ジャガイモと豆と塩漬け肉を似た物を皿にとって船員たちが食べていた。士官室では、船長と高級船員がボーイの給仕で食事をしていた。もちろん服とかも昔のまま再現したものを着ている。ここまでリアルだと、本当にタイムスリップした感じがしてくる。イギリスの有名なセシル・スコットの海洋冒険小説「キャプテン・ボーンブロワー」の一コマを見ている気がした。本当にこのミュージアムは素晴らしかった。

帰りに街に出て、ミリタリーショップで軍用の水兵のベレー帽を買った。それから電話ボックスから家に国際電話をした。来たばかりの時はテレフォンカードを売っている店がわからなくて苦労した。

外国では何をするのも大変だ。自分でやってみればよくわかる。でも、それが旅だ。日本がいかに安全で暮らしやすいかよくわかる。身にしみてわかるだろう。その意味でも、私は若い人に一人旅を勧める。自分が温室の中で育った人間である事、自分がいかに弱いかという事、人と人との関り合い、話をする事、話が出来ることの大切さ、ものの価値、そうした事を旅の中で理解するだろう。テレビはテレビでしかないのだ。

年をとってから旅しても意味はない(心が若ければ別であるが)。遊びだけで終わってしまう。でなければ人生の苦さを必要以上に味わうだけだ。真に旅を愛し、旅が好きな人は年取って旅をしてもそれが楽しいだろう。しかし一般的には、年を取ってからの一人旅は苦痛である。そこからは何も生まれないし、仮に生まれたとしてもそれを活かすべき時間が残されていない。

であるからこそ、私は若い人達に個人で未知の土地を、広い世界を旅する事を勧める。そして、旅の中で学んだ事や旅から持ち帰った(精神的な)ものは、自分の人生にとって大きなかけがえのないものになり得るだろうと私は自信を持って言うことが出来る。

5


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

Current day month ye@r *