アムステルダム日記 6

1998年6月19日

今日はアムステルダムを去って東京に行く日だ。

朝、ホテルの近くのカフェに行きティーを飲んだ。ボートハウスの対岸にこの店が見える。小さな、しかし落ち着いた店だが、ホステスさんらはその筋の姐さんみたいにケバイ。でも気の良さそうな女達で、ロートレックやゴッホが描いた女に似たところがある。駅に近いから宿も兼ねているカフェらしく、旅行者の姿を見かける。

ここのティーはポットで、しかもビスケットが付いていて私のホテルの一杯のティーと値段が同じだ。私はポットでお代わりして飲む習慣があるのでありがたい。外の風景を見ながらお茶を飲んだ。

アムスの街に未練はなかった。いかがわしくクレイジーな街、水の都。ヨーロッパの街では一番面白いかもしれない。この町には若さが感じられる。常に雑多な文化が流れ込むところだ。私は、ここがヨーロッパの吹き溜まりであるという表現は適していないことに、しばらく滞在して気づいた。文化というものは、外から流れ込む異質なものがないと若さを失い滅びる。この町は昔から、そして今も若さを保っている稀有な街の一つである。雑多で猥雑で芸術的、人種の坩堝、そんな街だ。

そして水が多く、水面がこの街を際立ったものにしている。ベニスより美しい街だ。絵を描く人間には非常に魅力的な街であることを否定できない。その退廃的なムードが、何とも言えず面白い。
11時前に、リュック一つを担ぎホテルを出た。一度、空港へはリコンファームの為に行ってるからまごつかずに行けた。

切符を自販機で買う。気の遠くなるような複雑な操作も覚えてたからすぐに買えた。初めての人は不可能に近い。この販売機はコンピューターみたいになっている。最初に行先の番号を表示版で調べる。空港は1117だから、まず数字のボタンを押す。次にワンウェイかリターンかという表示が出るから、そのどちらかのボタンを押す。次に1等か2等かという表示ボタンのランプが点くから、そのどちらかを押す。大人か子供か?どちらかのボタンを押す。と、初めて料金が表示される。コインを入れてやると、またどこかのボタンのランプが点くという調子……これでは初めての人間には分からない。表示もオランダ語だからますます分からない。それでも私は切符を買い、空港行のホームを調べて13bで待った。13aというのもあるから気を付けなければいけない。

時間になっても空港行の電車は来ず、駅員に聞くと「ネクスト ワン」という答えだった。何か事故かなんかで遅れているのだ。空港に行く時は早めに行動しているので時間はまだある。ギリギリだったら焦ったところだ。結局30分遅れ、別のホームから電車は発車した。駅員に聞かねば取り残されるところだった。

空港に着いてから、キャフェテリアで休んだ。冷たいビールとサンドイッチで昼食した。

その後KLMのカウンターに足を運び、チェックインをした。荷物は小型のザック一つだから機内持込み出来、手続きも簡単に済んだ。ボーディングカードを貰い、教えられた搭乗ゲートに行った。パスポートチェックを受けて、出発ロビーに入った。時間が90分くらいあったのでキャフェテリアに行き、ビールを飲んで時間を潰した。この時にトイレに行っておくと良い。コインが余っていたので、土産物屋で600円くらいの風車を買った。一個だけ。

私は土産物はほとんど買わない。そういう旅でもないし、荷物になるからだ。思い出とフィルムと画帳と手記とミュージックテープだけを持ち帰る。そんな旅をずっとやって来た。

搭乗ルームが開いたので入る。簡単なチェック(X線と金属探知機)を受けて、搭乗ルームに入る。この時、ボーディングカードの一部をちぎって渡される。これが切符だ。切符にはシートのナンバーが書いてあるから、それを見て自分の座るべき座席を探せばよい。

結局KLM861便は45分遅れて、15時15分にスキーポール空港を飛び立った。乗客の9割は日本人だった。ナイロビからアムスへの機内は騒がしかった(黒人が7割くらい)が、こちらは静かなものだ。日本人は、アフリカ人や欧米人に比べると大人しいし、、声も小さいのではないかと感じた。マナーの点でも申し分ない。

よく見ていると欧米人もカメラやビデオを持ち歩いてパチパチ撮っている。日本人だけがカメラ人間じゃない。日本人にとって西洋は異文化だから、好奇心をそそられる。だからカメラでパチパチ撮るのは自然の行動だと思う。

言葉が不自由という点では損しているが、秘密を守れるという利点もある。つまり私は言葉のバリヤーの事を言ってるのだ。英語を母国語としている人達にはバリヤーは作れないから不利な場合もあるのだ。ヨーロッパ人は一昔前と違って、本当に英語をよく喋るようになっている。もちろん我々日本人よりずっと上手だし、完璧な英語を操る者も多い。

今や英語は、すっかり世界共通語となった。やはり、日本人も英会話をもっと勉強し国際社会に乗り遅れないように行動する必要を感じる。飛行場での場内アナウンスを聞き取れるだけでもずいぶん違う。日本語は日本語でしっかりと保ち、なおかつ英語で話ができるように勉強しなくてはならない。それが海外の情勢である。

窓から外を見ると、飛行機はスカンジナビア半島の上空を越え、ロシアの北側を通過しつつあった。何も無い……人の住まない凍った土地がどこまでも広がっていた。飛行機で飛びながら外を眺め観察していると、人間の住める土地が意外と少なく、人間の住んでいない土地の方がはるかに多い事に気付く。日本より広い面積に一本の道もない。一軒の人家もない。そんな土地の上空を飛んで行った。

我々は情報で何でも知っていると思いがちだが、こうしたものを見ていると、実は何も知らないのだと気付く。私はTEND OWN YOUR GERDEN(自分の庭を見守れ)という、あのイギリス人の教えてくれた言葉を思い出した。

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