マジャールの残影 1-2

シーズンオフとあって、機内はガラ空きで窓際に座って外を眺めたり、空席を利用して横になって眠ったりする事が出来た。

日本時間ではもう夜の8時を過ぎているのに、丸窓の外から差し込む太陽の光が眩しい。これは飛行機が西に向かって、つまり太陽に向かって飛び続けているためだ。それでも夜の11時頃には無事モスクワ空港に着いた。まだ明るい。モスクワ空港の時計は午後6時を示していた。私は自分の時計を取り出して時間を合わせた。

戸外は寒かった。全体にどこか暗いムードだ。

税関では長い間待たされた。ホテルからの迎えのバスもなかなか来ない。何の説明もなく、まごつく。サービスの悪さと能率の悪さはここでは昔からだが、ペレストロイカから7年も過ぎたというのに相変わらず酷いものだ。いささかガッカリさせられた。

ホテルは目の前にあるのに、結局私達がホテルの部屋に入って寛ぐ事が出来たのはそれから2時間後だった。時計は9時を回っていた。

空港ホテル「ノボテル」は新築で小奇麗なものだった。部屋には清潔なバスルームが付いていて栓をひねれば何時でもお湯が出たが、ホテル側のサービスは決して良いとは言えない。

同じ機に乗り合わせ、今夜このホテルに泊まる日本人客は私達の他に二人いた。一人は若い女性のSさんで、もう一人は私より少し年上のおじさんのA氏である。

SさんもA氏も旅のベテランだった。A氏は1ヶ月の予定でトルコを旅するとの事。Sさんは2ヶ月の予定でトルコとアフリカを回る計画だという。旅慣れているらしく、荷物はリュック一つだ。話を聞いてみると、A氏のような人も珍しいがSさんもそうザラにはいない旅行家であると思った。オフシーズンにはこんな旅人によく出会うものだ。

シャワーを浴びてから下のロビーに行こうと思ったが、階段は見当たらなかった。エレベーターも乗り口が見つからなかった。こんなホテルは初めてだ。全てのドアと通路がロックされている。電話をかけてもフロントからの応答もない。メイドに聞いても知らん顔された。これでは軟禁されている様なものだ。サービスは悪いが警戒だけは厳重だ。考えてみれば、それは旧ソ連の体制そのものではないか。

結局下のロビーには行けず諦めた。下のロビーの奥にはレストランもあるが、ベラボウに高いし、どうせサービスも悪いに決まってるから、レストランで夕食を取るのは止めた。私と妻は、日本を出る時母が包んでくれたおにぎりと漬物でおざなりの夕食を済ませた。

それにしても、部屋の時計と私が空港で合わせた時計と1時間以上もの誤差があるので驚いた。どちらが本当なのか分からない。(後で、空港のが間違っていたのが分かって呆然とさせられた)

hungary1-2


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

Current day month ye@r *