マジャールの残影 4-2

店を出ると、人が溢れていた。その向こうには、壮大な市庁舎がそびえていた。

拝崎君に教えられるまで、私はそれを王宮だとばかり思っていた。たまに今風のコンクリートの高層建築を見るが、ここではアール・デコやロマネスクが主流で、ル・コンビジェをを思わせる現代建築はなんだか非人間的で味気なく、殺風景でしかない感じがした。

両者を比較してみると、そこに時間の流れる速度の違いというものをまざまざと見せつけられる。

昔の石造りの建築物は、完成するのに何十年、あるいは何百年も要している。それに対し現代建築は数年、又は数ヶ月しか要してない。ここに建築物の性格が如実に示されている。

前者は「どうしてそこまでやる必要があるのか?」と思わせるくらいだ。壁はレリーフと彫像に埋め尽くされている。建物は変化に富んでいて、個性的と言うよりは芸術そのものだ。

この建物の性格は何を示すかと言えば、私はノーブルな貴族的性格と言って良いと思う。この私のいるホテルもそうだが、このウィーンの旧市街はノーブルな中世的な建築群によって構成され、細い道や広い通りがラビリンスを形成している。

様々な店のショーウィンドーを覘いて歩くだけでも楽しい。素敵なレストランやカフェが軒を連ね、昼間はイスとテーブルを歩道や広場まで押し出して、人々が往来を眺め眺めながら食事や喫茶を楽しんでいる姿がある。

夜になると照明が美しい。心が浮き浮きするようにエレガントで美しい街だ。

街中を歩いていてどこかで見たような風景だと思ったら、映画「第三の男」のロケが行われた所だと拝崎君が説明してくれた。夜の街の光と影が、あんなに美しく表現された映画もそう無い。オーソン・ウェルズがジョセフ・コットンがビビアン・リーが、街角からそのまま表れても不思議はない。

12時半に再び大使館に戻り、ハンガリーのビザを貰った。料金はダブルビザのエクスプレスで12000円も取られた。これはあんまりにも高い。

今まで世界中の色んな国を旅したが、ビザ代にこんなにふんだくられたのは初めて。腹が立つことしきり。

昼過ぎにホテルへ戻った。フミコは昨日以来体調が思わしくない。昨日、寒い中をハンガリー大使館を探したりするのに長時間歩き回ってる間に風邪をひいたらしい。

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