マジャールの残影 6-3

中年の女性が声をかけてきた。英語だった。

「部屋を探しているのか?」

と言うので

「そうだ」

と言うと、

「私のアパートのプライベートルームが空いている。一晩二人でシリングなら300、フリントなら500だがどうか」

と彼女は言った。

再び私の中の赤信号が灯る。紹介所を通していないので心配だった。しかし私は、彼女の人柄を見て大丈夫だと思ったのでOKした。
彼女の案内でメトロに乗り、2つ目の駅で降りた。

そのアパートは丁度メトロのニュガティ駅の出口の所にあった。バスターミナルのあるエリジェベート広場も、格安航空券やインフォメーション、両替所など旅行のアイテムが集中するデアーク広場にも近く、そこまで歩いて行く事ができる。

アパートに着き、中を見せてもらった。部屋は広く、共同のキッチンとシャワールーム、水洗トイレが付き、栓をひねればいつでも湯が出た。二人で3000円だから、地の利を考えれば高くはない。

部屋が気に入ったので泊まる事にして、3日分をシリングで払うと彼女はキーをくれて、さっさと行ってしまった。一晩騙されたのかとも思った。昔、「アパートの鍵貸します」という映画があったが、まったくそれと同じだった。

結局3晩泊まり、出る時部屋に鍵をかけ、キーは彼女のメイルボックスに投げ込んでおいた。彼女には最初に1回きりで、ついに会う事はなかった。

そのアパートは、あのロマネスク風の古い建物で8階建て、ブダペストの街を形成するあの壮大な建築群の一角を成している。日本の国会議事堂が貧弱に見えてしまう。

部屋の天井は遥か高い所にあり、ドアの高さは3メートル程もあった。部屋の広さは20畳くらいもあり、そんな大きな部屋に慣れてない私は少々落ち着かなかった。

夕方、近くのスーパーで食料を買い込み、アパートに帰って久々にキッチンで料理した。電気レンジ、冷蔵庫、テーブルとイス、それに鍋やフライパン、まな板などの調理器具、皿、コップなどの食器類、スプーンやナイフなども全て揃っているので調理する宿泊者にはありがたい。

これで1泊3000円。地の利を考えると安い!レストランでの食事にはいささかうんざりし始めていた頃なので、自炊できるのが楽しくもあり、嬉しかった。

ご飯を炊き、野菜と肉を料理し、ウィーンで買った醤油で味付けした。それと、日本から持って来た梅干を一緒に食べると、お腹の調子が大変良くなった。

フミコも体調を回復し、元気になってきた。ビールとワインで乾杯!

hungary6-3


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