マジャールの残影 9-2

バスターミナルに着いてガイドブック「地球の歩き方」を広げる。目星をつけておいた安ホテル「クバルネル」のあるサーモジイビュレン通りを、バスの運転手に教えてもらって歩き出す。

ターミナルから大通りを渡ったすぐの所にあった。しかし、レストランに入って主人に聞くと

「もうやってない」

と言う。がっかりした。主人が

「フェニックスホテルへ行くと良いよ」

と教えてくれた。もちろん英語も日本語も通じる訳はなくマジャール語だが、相手が言ってる事は何となく分かるものだ。

しかしフェニックスは高いので、バスセンターに戻り、その横のマーケットでリンゴを買って食べながらもう一度ガイドブックを調べ、「ヤーノシェ・ピンツェ」というホテルを探す事にする。地図をよく見て、おおよその街の地理とホテルの位置を頭に入れた。

また歩き始める。街路には人々が溢れ、陽光は木の葉の中でエメラルドに輝き、空気は爽やかだった。

歩く程に、ペーチが実に美しく魅力的な街である事が分かって来て嬉しかった。若者が非常に多いのは、この町が昔から学問で栄え、今日も大学がたくさんあるからだ。

レストラン前の街路にはイスとテーブルが並べられ、人々がティーやビールやワインを飲みながら憩っていた。ブダペストの人々は忙しげだったが、ここの人々はのんびりと時を過ごしている印象を受けた。

汗をかきながらメインストリートを上って行く。城壁を出た所で、目指す「ヤーノシェ・ピンツェ」の看板を見つけた。

矢印の方向に少し行った所にきれいな家が建っていた。庭もよく手入れされている。そこがペンションだった。

丁度カミさんが外にいたので声をかける。しかし、

「今日は空いてない。明日は泊まれます」

という返事だった。トゥモローOKという単語だけ英語で、後は全てマジャール語だ。

「どこか他にホテルを知りませんか?」

と日本語で言ってノートとペンを彼女に渡す。

彼女はうなずいて、ホテルの名前と住所を書いてくれた。それには「MiNi HOTEL KOCZiAN4:2」と書いてあった。私達は彼女が指差した方へ向かって歩き始めた。

肩の荷が急に重たくなったような気がした。

hungary9-2


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