マジャールの残影 9-3

途中でベッド印の看板があったので、そちらの方へ行ってみた。しかし着いてみると巨大な高級ホテルで、ガラス越しに制服のボーイやフロントマンの姿が見えた。

汗と埃にまみれた姿で、リュックを担いでそんな所へ乗り込む勇気も無かったので、スゴスゴと引き返した。

いささか疲れて、途中にあった町外れの小さなレストランで昼食をとる事にした。目立たないが、外も中も清潔で感じが良かった。

若いウェイトレスが一人いた。アンネ・フランクリンにそっくりだ。彼女も感じが良い。マジャール語もドイツ語も分からないと知ると、英語のメニューを持って来てくれた。

しかし英語のメニューは読み慣れているものの、実態が頭に浮かんで来なかった。私もだいぶ疲れていると思った。

入口の所に料理の写真があったので、彼女を呼んで写真の中から美味しそうな料理を選んで指で示すと、ウェイトレスは嫌な顔もせずに「わかったわ」とウインクしてみせた。私達はワインと2種類のメインディッシュ、それと紅茶とソーダ水を注文した。

ワインをチビチビ飲んでいるうちに、テーブルに料理が運ばれてきた。私達は2皿の料理を見て感激した。これぞハンガリー料理というのがジャジャーンと登場したのだ。

それにしてもメニューはチンプンカンプンだ。

「CSiRKECSiKOK A LA CHEF」

A LA CHEFはわかる。シェフのお勧めの意。するとこのCSiRKECSiKOKは何だろう。料理を見てすぐ分かった。チキンの胸肉の事だった。

「TONHALAS PALACSiNTA」

これは何であるか?後ろのPALACSiNTA(パラチンタ)はハンガリーの代表的なものでいわゆるクレープであるが、TONHALASが分からない。これは中に挽肉を詰めたクレープの上にマッシュルームのソテー(ソースは独特)が掛けられていた。豆のサラダが添えられていた。

他に赤カブの酢漬けのサラダ一皿と大盛りのフライドポテトもあった。特にシェフおすすめの鳥の料理は美味しかった。

食事を済ませてから会計してもらった。トータルで750Ft。日本円で600円くらい。信じられない値段だ。日本だとこの10倍はするだろうし、ウィーンだと8倍くらいは取られるだろう。非常に安い。

これで私も、この地にとどまる事が出来そうだと思った。マジャール語を覚え、マジャールの料理を知り、ハンガリーの文化を多少なりとも知り、そして絵も描けるのではないかと思った。

hungary9-3


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