マジャールの残影 23-1

1997年5月11日 日曜日 晴れ

朝、同宿のカナダ人夫妻がギョー(ジェール)に出発。お別れした。

「ぜひカナダへ来たら遊びに来てネ。家は大きいし私達二人だけだから、何日泊まってもいいわよ」

とルイーズが言った。私はヒューバート氏と握手した。フミコがルイーズに指輪を上げた。

結局、カタリンのアパートは私達二人だけになった。ちょっと寂しい。

昼前にアパートを出て、英雄広場の横にある国立美術館へ出かけた。日曜日とあって店は休み。人通りは少ない。

デアークからメトロに乗る。メトロに自分達だけで乗るのは初めて。駅の中をウロウロしてやっと切符売り場を見つけて切符を買う(60Ft)。ノートに大きくHÖSÖK TELEと書いたら解ってくれた。

しかし、改札所らしきものも無く、係員の姿も無い。小さな郵便受けみたいな恰好の物が数本立っている。見ていると、人々は切符をその機械に差し込んでから取り出している。その時カチンと音がするところから自動改札機と分かる。

私達も同じようにして切符に穴をあけ、それから地下へもぐるエスカレーターに乗って下のプラットホームへ下りた。

ブダペストの地下鉄は、ここデアーク広場を中心にM1、M2、M3の3つの路線が伸びている。私達はM1アンドラーシ行に乗ってHÖSÖK TELE(ヘーシェーク テル)まで行くのだ。

地下鉄の路線図を見ながらプラットホームの駅名を見落とさないようにしていたが、何かの拍子に見落としたらしく結局終点まで行ってしまった。取りあえず、降りて外へ出る。2駅しか離れてないから歩いて戻れるだろう。

出た所にカフェがあって、外のテーブルでビールを飲んでいた人達に

「HÖSÖK TELEまで歩いて行きたいけど、どっちの方へ行けばいいか」

と片言のハンガリー語で尋ねてみた。

彼等は親切で

「わかりにくいから止した方が良いよ。メトロで行った方がベター」

だと教えてくれた。

なるほど、道は一本道じゃなくて入り組んでいる。これじゃー途中で迷子になってしまう。

私と妻は再び自動販売機で切符を買う羽目になった。ところが、この自動販売機が曲者なのだ。

初めに100Ft玉を入れると、釣りどころか切符も出て来なかった。あれやこれやボタンを押してみたが、出て来ない。まるで詐欺に遭ったようなものだ。駅は終点駅なのに係員は一人もいない。失業者が一杯いるのに、何もわざわざ無人化する事もあるまいにと腹が立った。

しかし、これも社会主義から修正資本主義へと移行した反動現象なのだろう。社会主義の国では、必要もない部署にでも係員がいて一日中仕事らしい仕事もせず、ゴロゴロしていて給料(税金)を貰ってなおかつ偉そうにしている姿が目立つ。

どっちが良いとも思わない。何事も、過ぎたるは及ばざるが如しだ。

ブツブツ言っても始まらない。私達は切符が必要なのだ。今度は釣銭だけでも機械にふんだくられぬ様に60Ftだけ放り込んでみた。それでも切符は出て来ない。またやられたかと、歯ぎしりしながらあちこちボタンを押したが駄目だった。

頭に来て、コノヤローとばかり自動販売機にゲンコツを1発お見舞いしてやった。そしたらなんと!切符が出てきたではないか。私達は笑いながら地下に行き、終点からデアークへと行くメトロに乗った。

このM1路線は、世界最古のロンドンの地下鉄に続き、約100年前に2番目に作られた。車両も駅もクラシックで、エレガントにできている。駅の構内の壁はタイル張り。落書きも無くキレイだ。

私たちはやっとの思いでHÖSÖK TELEで降りた。

hungary23-1


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