マジャールの残影 38

1997年5月27日

朝6時に目が覚めた。それでもよく眠れた方だ。ここ最近寝苦しく、あまり眠れない。心臓の調子が良くないようだ。

朝、フミコと駅へ行き、ブダペスト行の汽車の時刻を調べた。

5月も末だというのに、外は肌寒かった。道行く人々も、またコートをひっぱり出して着ている。私達はコートをブダペストのカタリンのアパートに置いて来てしまったので、セーターしかない。

雨に濡れた公園のペーブメントをゆっくり歩いていった。マロニエの花も盛りを過ぎて残り少なくなった。

私達がウィーンに来た時は、まだやっと葉が開きかけたばかりだった。今は1枚1枚が大きく立派になって、日差しの強い暑い日には、格好の木陰を提供してくれている。ペーチにいた頃は、マロニエの花影を歩いたものだった。

今日は写真を撮る元気もなく、トボトボと歩いた。体調は最悪だ。

駅で時間を調べた後、SÖRÖZÖ(セレーゼ:ビアホール)で生ぬるいエスプレッソを仕方なく飲み(本当は熱いティーを飲みたかったが無かった)、再び歩いて宿に帰った。

昼過ぎにいつものカフェに行き、ティーを飲んだ。ここのはカップが小さめのドンブリ程もある。形もドンブリ状で、取っ手がついてるからティーカップかと思うくらいのもんだ。手をカップで温めながら、熱いティーをすすった。

日中は、家の中でもっぱらスケッチの色付けをして過ごす。

夜、中国料理店に行き食事。他のレストランと違ってなぜか気分が落ち着く。広くて高級な店である。西洋も面白い?興味深いものがあるが、やはり東洋的なものに心がリラックスできる。

支配人のチェンさんが、私の健康状態を心配してくれ、心臓に効く特別な茶を出してくれた。

麻婆豆腐、ダックと野菜のうま煮、チキンとタケノコ、シイタケを炒めたもの、白飯3杯、お茶、ソーダ水など全部で2000Ft(1600円)ちょっとだった。

チェンは親切な男で、何か困った事があったらいつでも助けてあげると言ってくれた。彼はハンガリーに来て6年になり、ハンガリー語は達者である。初めは市場みたいな所でビジネスをしていて、その頃は非常に儲かったけど、今は景気が悪くて落ち目だとこぼしていた。

ハンガリーはどうかと聞くと、

「ハンガリー人はプライドも強いし、遊んでばかりで働くのが好きじゃない」

と手厳しい返事が返ってきた。

働くのと金儲けの好きな中国人とはウマが合うはずもない。ハンガリーでは中国人は嫌われている、と三木君が言っていたのを思い出す。

チェンはだいぶ忘れたと言いながらも、英語を操りながら私達の相手をしてくれた。レストランが暇だから、そんな事もできる訳だ。私達のレストラン「モレーナ」も似たようなものだ。

夜道をテクテク歩いてホテルに帰る。寒くて震えた。胸の辺りが痛む。

空にはドボーの城を背後にして、青い星が光っていた。

hungary38


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