マジャールの残影 42-2

ここでは英語は通用しない。マクドナルドの店に行っても、店員は英語を知らない。アメリカ人が店員に向かって

「ここはマクドナルドなのになんで俺の言ってる事が分からネーんだ」

と、ジョーク交じりのヤンキー英語でまくし立てているのを見た。

コーヒーはカベと言う。日本語で壁と言えば通じる。ティー(紅茶)はテオ(tea)と言わねば出してもらえない。

私は店員に

「ケーレム・エイジ・テオ」

と言って熱い紅茶を頼む。

私よりも数等立派な身なりのウェイターがテーブルに茶を運んでくる。茶器も皿も立派な美しいものだ。立ち去る前に目顔でウェイターに合図する手を挙げても良い。ウェイターが来る。私は

「メンニ?」

と言う。

「メンニ・ベ・ケルル」と言えば完全だが、「メンニ?」で充分だ。

「サートブネージ・ベン(150フォーリン)」

とウェイターが答えると、私は200フォーリンを渡し、仕草で

「釣りはいりません」

と言って店を出る。ウェイターは

「ケセネ・セーベン(ありがとうございます)」

と言って手を振って私を見送る。

大抵、どこに行ってもこのようなステップを踏まねばならない。それで私はしばしばマクドナルドやバーガーキングに足を運び、そこで紙コップに入った紅茶を飲んだりする。こちらの方は気を使わなくて済むので、精神的に楽だ。

私はどうも、紳士ぶるのが性に合わないみたいだ。

寒い日は、そんな店の隅っこに陣取り、大きなガラス窓越しに街角の風景や人物をスケッチしたりして過ごしている。

この日はドナウの河岸を散歩した後、近くのマクドナルドに入って熱い紅茶を2杯飲み、ガラス窓の外がちょうど花屋さんだったので、店頭の様子をノートにボールペンでスケッチした。

帰りしなに、スーパーでトイレットペーパーを買った。ブダペストで生活している実感を、この時初めて感じた。

アパルトマンに戻り、少し休んだ。その後、室内でスケッチに色を付ける作業をした。

hungary42-2


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