マジャールの残影 45-2

絵を描き上げたので、フミコと午後2時過ぎに近くのトルコ料理店に行った。

最近見つけた目立たない店。横町にあり、観光客も来ないし値段も安く、店はのんびりとした感じで気持ちが休まる。無口なずんぐりとしたオーナーはおとなしい人で、誠実な感じの男だった。日本人だと言ったら驚いていた。なんでか?

トルコのチャイは美味だ。こちらの店はどんな高級レストランでも、紅茶はティーバッグで出て来るので美味しくない。ここのはトルコ式にトルコの急須、またはサモワールが使用され本格的なもので、これぞ本物の味だ。

料理もハンガリー料理よりは数等ランクが上だろう。ハンガリー料理は他の西洋料理よりは少しましだが、トルコやペルシャやインドの料理に比べたら、西洋料理もマジャールの料理も大したことはない。

これは文明の深さの違いであるのかも知れぬし、私の単なる好み、独断と偏見によるものかも知れない。しかし、野蛮人から抜け出た後の歴史の長さが、料理の高等さと無関係であるとは私は思わない。

と言う訳で、私達はこちらの料理にウンザリすると、しばしばトルコ料理店や中国料理店に足を運んだ。しかし、日本料理店や寿司バーには一度も行ってない。ここまで来てそんな所へ行くんじゃ、何の為に旅しているのかわからない。それに、料理の内容に対し値段が不当に高すぎる。外国の日本料理店は、料理の美味しさと言う点では普通かそれ以下であって、ベリーグッドなんて事は滅多にあるもんではないのだ。

しかし本国から離れた生活を長らく送っていると、舌が馬鹿になってしまうのか

「オー!これはうまい、うまい」

と涙ぐんだりするのは、悲しい人間のサガではある。

私は、数年に渡る外国放浪の果てにネパールのカトマンズで「うどん」に出会い、ネギと箸とドンブリに、そしてあの熱い「うどん」をずるずる、フーフー言いながら食べる事の感動に涙が止まらなくなったのを思い出す。長い苦しい旅の疲れが慰められる思いだった。

トルコ料理店でドナ・キャバブを食べて遅い昼食を済ませた。これは、オープン式のトルコ独特のオーブンで焼いたラムを、チャパティ又はピタパンでくるんだもので美味しい。値段は250Ft(200円)くらいで、1個でお腹一杯になる。

家に帰り、休む、絵を描く。

夕方に気晴らしと運動の為に、フミコと歩いてドナウ川の岸辺に行った。夕映えの河の上を、小さな船や大きな汽船、荷を運ぶ貨物船がゆっくりと上り下りしている。背景の丘の上には、昔の宮殿やマチーシーの教会の尖塔がそびえている。

美しい風景に心は和む。河の水の流れる様を、岸辺に座ってぼんやり眺めた。

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