マジャールの残影 46-2

私は、バリからロンボク島へ行った時には、ますますそのプリミティブなシンプルライフというものに心を打たれた。

彼らが荷馬車に乗って村から街へ買い物に行く間に、私達はジェット機でパリからニューヨークへ行く事が出来る。しかし、「出来る」、ただそれだけの事だ。

私達の生活が文明の頂点にある今、果たして幸せなのかどうか、私は考えざるを得なかった。

私が2週間余り滞在していた、ロンボク島の南端の小さな漁師の村を私は思い出す。

夜になると、ランプの灯がどの漁師の小屋にもチラチラと瞬いていた。その傍らには、小屋を作る材料を、油を、薬を、ロープの材料を、船のコーキング材を、そして美味しい甘いジュースを、心地よい木陰を提供してくれる、あの背の高いココナツの木がサワサワと音を立てて立っていた。

夕方になると、漁師たちはアウトリガーの手製のカヌーに乗り、帆を操って海に出て行った。

夜になると、沖合にはケロシンランプの漁火があちこちに灯った。

夜明けに漁師たちは漁を終えて浜に帰ってきた。私もスケッチブックを片手に、女子供に交じって、帆舟がゆっくりとリーフの中へ滑り込んで浜に近づいてくるのを見守った。

漁で獲れた魚は分配され、自家消費された。余った魚は女達がかごに入れ、頭に乗せて朝市へ運び、女たちはやってくる客にうまく売り払い、昼には村へと帰って来た。かごの中には、子供達にやるお菓子なども入っている。

子供らはサトウキビが好物で、皮を剥いてしゃぶっているのを私はしばしば見た。それを見て、私は子供の頃を懐かしく思った。運動会や遠足に行く時には、2メートルくらいもあるサトウキビを2、3本肩に担いで持って行ったものだ。ポキンと折って歯で皮を剥き、白い茎をグシャグシャと噛むと甘いジュースが出てくる。

今の子供だって、与えれば大半の子供は興味を示すと思うが、

「そんなもの不潔だから駄目よ」

と親が与えようとしない。

市場にあるのはエキスであるところの砂糖ばかりで、これはサトウキビよりもずっと歯の健康を害している。サトウキビは硬い繊維質だから、それを噛む事で歯をきれいに磨いてしまうし、顎を発達させるのだ。

ここにも文明の悲劇を見てとる事が出来よう。

hungary46-2


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