マジャールの残影 47-2

朝のストリートは通勤の人々や車で一杯だった。朝の日の光の中で、マロニエの葉がエメラルドの美しいシンフォニーを奏でている。ビゴー(九官鳥)がどこかで囀っていた。

島から橋を渡る少し手前でカタリンは車を止め、

「イチゴ狩りに行かないか」

と言った。

私達も賛成だったので、一緒に行った。

車はすぐに大きな農場の中へと入って行った。見渡す限りのイチゴ畑が広がっており、人々がイチゴを摘んでいた。

私とフミコは、去年家の畑に植えたイチゴの事を思い出し、早く帰り草を除いてやらなければと話し合った。

私達もかごを持ってイチゴ畑に入り、イチゴを摘んだ。

楽しかった。土とイチゴに触れ、無性に嬉しかった。私がさっそく、その辺のイチゴを土を手で払っただけで口に入れてパクパクやっていると、

「買ってからじゃないと食べられないのよ」

とカタリンが言い、フミコと一緒に慌て者の私を笑った。フミコに言わせると、私は原始人に近いらしい。カタリンも、そうだわネと言って笑った。

最後に、積んだイチゴを農場の係りの人に量ってもらい、お金を払った。値段は日本の1/10くらい。

カタリンが

「今度の日曜日に家に遊びに来てネ」

と言ってくれた。

私達は会う約束をしてアパートの前で別れた。

昼頃までベッドの上で休む。

途中から起きて、昨日画材店で手に入れたイタリア製のイーゼルを立て、真新しいロシア製の水彩絵具(固形24色、セント・ペテルスブルグ製)の箱を開き、絵を描いた。ついつい私は興奮してしまい、ちょっと胸が苦しくなった。しかし、嬉しさはひとしおだ。

イタリー製の携帯用のイーゼルは軽くてデザインも良く、気に入った。ロシア製の絵具は最高級のもので、日本では手に入らないものである。あと、これで良い筆が手に入れば、それだけでも今までの苦労が報われる。

今持っている2本のセーブル筆はこれまで使用した筆の中でも一等気に入っているが、シルクロードで西濃さん(大阪に住む職業画家)に貰ってからすでに7年も経ち、使い古して擦り切れてきている。駄目になる前に、何とか良い筆を手に入れたい。

3時過ぎにフミコと散歩に行く。

エリジャベート通りをブラブラ歩いて、オクトゴンの交差点の角のキング・バーガー(ハンガリーのチェーン店)で休んだ。

私は熱いティーを紙コップで飲みながら、戸外のストリート風景をスケッチした。

hungary47-2


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