マジャールの残影 54-2

トニが今夜のオペラのチケットを買ってくれていたので、疲れていたが、夕方、タクシーでフォルクス・オーパーに行った。

すでにオペラ座の前には、紳士淑女がたくさん集まっていた。こちらはTシャツにコットンのズボン、それにベレー帽というスタイルで、入口でつまみ出されるかと思ったが、タキシードの係員はなかなか親切であった。

カーサ(英語でキャッシャー)の窓口でトニがよこした紙キレを差し出すと、立派なチケットに替えてくれた。

2階と書いてあるので、それらしき所から中に入ろうとすると、タキシードの係員が天井を指さして、上だと言う。結局、指示通り行くとガルレリーア(天井桟敷)に出た。そこが私達の席だった(2枚450シリング)。

天井が頭のすぐ真上にあり、舞台はずっと下の方にある。常連らしい人々も目に付いた。オペラ通は、1年365日通う人もいるから、ガルレリーアで見ると聞いたことがある。

それにしても超満員で、館内の温度はうなぎのぼり。私の所は天井だから、熱気が全部上がってくるのだ。私はすっかり具合が悪くなり、前半の途中でギブアップして廊下に出た。中年の太ったタキシード氏が赤ら顔で

「暑いか?」

と聞いた。私が

「カプートだ」

と言うと、彼は頷き笑った。

私は廊下の窓際の椅子に掛けて休んだ。

「ジプシー男爵」、セリフも分からんければ、ストーリーも分からなくては面白さは今一だ。

前半が終わった所で、熱気と一緒に客がドアからドーとあふれ出てきた。

私はフミコとテクテク歩いて、ショッペン・トーワーのRiNG・KAi・RiNGのチンチン電車乗り場まで行った。すっかり疲れてしまい、途中で2回くらい休んだ。こんな事で本当に日本へ帰れるのかと心配になった。それでも、チンチン電車は乗ってるだけで楽しいものだった。

ウィーンの旧市内をクルリと回る。乗り過ごしても、しばらく乗ってればそこに着くのだ。1枚の切符で1時間乗っていられる。ウィーンの名所みたいなものは、大概この電車の窓から眺められる。

「もっと早く気が付いてればよかったのにネ」

とフミコが言った。私も同感であった。

帰りに「PiZZA」というサラダ・バーで食事した。山盛りのサラダと、山盛りの野菜料理を食べた。

10時頃ベッドに入ったが、気分が悪くてなかなか眠れず困った。フミコに背中を指圧してもらったら、だいぶ楽になって眠る事が出来た。

hungary54-2


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