自転車旅行(スペイン・ポルトガル編)3-2

1990年3月24日

午前中、近くのバンコに行って両替をした。自転車旅行を始めてからは、キャンプしているので宿泊費はかからなくなり、食糧代しかかからなくなった。食糧の他には、ガスボンベ、ローソクとかノート、ペンなどの日用品に少しお金がいるくらいだ。平均すると、二人で一日1000ペセタ(1500円)くらいしか使っていない。もっと節約すれば、一日700ペセタ(1000円)くらいに出来そうだ。

計画では、イベリア半島を一周して、夏にはラップランドのノースケープ(ヨーロッパ最北端)まで北上するが、それで30万円は消える。帰りの飛行機代はどうするのか、そこまでは考えてない。

懐に一銭もなくても、割と平気でいられる。ただ、そういう時に病気だと切ない。健康を心掛けるのが第一と考える。後は何とかなるものなのだ。クヨクヨとアレコレ先のことを心配すると、出来る事も出来ずに終ってしまうものだ。「行動あるのみ」が、私のモットーである。

ここはのんびりした土地で、2時からシェスタになる。店が開くのは、午後は夕方5時頃から、そして8時には閉まってしまう。午前中は9時頃から開き、2時に閉まる。これを知らないと、旅行者はひどい目に合う。僕らもシェスタに合せて、昼寝した。

夕方、4時にノコノコ起き出して、町へ出かけた。土曜日の午後は(日曜日も)どの店も閉まっている。それを知らなかったので、ガスボンベを買いそこねた。幸いカバンの底にスペアが一本残っていたので、助かった。

スーパーで買物。酒や肉などは、ものすごく安い(食品以外は高いけど)。セルベッサの小瓶は、1本35ペセタ(50円)だし、ワインも1リットルの瓶入りが100ペセタ(150円)で買える。スペアリブを500グラム買ったが、たったの100ペセタ(150円)。ターキーのモモ1キログラムが128ペセタ(200円)で買えたのには驚いた。

スペイン南部は、物価がマドリッドより安い。料理してみると、それらの肉は安いばかりか、日本で売られている物よりもずっと美味なのにびっくりした。玉子は日本より少し高いが、味はずっと良い。ハム類、ソーセージ、チーズ等はびっくりする程種類が豊富で、見た事も食べた事もないものがほとんどと言ってよく、アレコレ買って試食するのが楽しみでもある。

買物の後、近くのバルでセルベッサを、オリーブをつまみにして一杯ひっかけた。大きなグラスに一杯のセルベッサが、たったの60円だ。ワインも、大きな樽からグラスに直接注いでくれる。地酒だからうまい。値段もセルベッサ(ビール)と同じくらい。コーヒーは、一杯50ペセタ(75円)位が普通だ。

日本人が喫茶店に、一日に一回入るかどうかというのに、スペイン人はこうした店に、一日十回かそれ以上入る。ビノを十件はしごしたって、1000円以下で済む。利用回数が桁違いなのだ。店も多いし、客も多いから、チャージも安くなるという訳らしい。宿も下宿代りに使う人も多いので、日本などよりずっと安い。利用回数がここも多いという訳だ。僕らの部屋は狭いながら、ダブルベッド、タンス、ベッドのサイドテーブル、シャワー、ビデが付いており、ピカピカで綺麗だが、二人でたったの1800ペセタ(2400円)である。一ヶ月位の長期なら、もっと安くしてくれる。スペイン人の所得は、今や日本と大差ないのだから、暮らしやすいのではないかと思う。

歩いてブラブラと、街の中心部に行ってみた。大きな広場、城、巨大な教会、見るものすべてに圧倒される。スペインにおける過去の遺産は、計り知れぬ莫大なものであることを実感した。過去において、コンキスタドールが、新大陸アステカやインカから運んだ富は、莫大なものだ。フェルナン・コルテスやピサロはこの国では英雄だ。トラファルガー海戦で、英国のネルソンに負けるまで、文字通りスペインは、世界を支配する一大帝国であった。その過去の栄光遺産を、スペインのあちこちに発見する時、その桁違いなすごさにただ茫然とさせられるのみだ。

路地裏に入ると、そこかしこに小さなプラザ(広場)があって、バルやレストランが屋外にテーブルを並べ、客が赤いキャンドルを中央に据えたテーブルを囲んで、食事したり、雑談しながら春の宵を過ごしていた。僕らもそうしたテーブルにかけて、コーヒーを飲み、通りを行く人々や、美しい建物を眺めて休んだ。

ここにいて、そぞろ歩いたり、一杯ひっかけたり、食事しながら友と過ごせば、人生もまんざらではないと思ったりする。

レストランや民家の白壁の角燈が、狭い石畳の上を照らしている。オレンジの木の下に並べられたイスとテーブル。そこから、男女のさざめきが沸き上がる。レストランの中からは、フラメンコの曲も流れて来る。心地良い風が吹いている。見上げると高いアカシアの木は花盛りで、ブドウの房のようなクリーム色の花が風に揺れている。角燈の光が届かない所は、花が青白く見える。花影と花影の間には夜の星が輝いて、夢見るようである。

帰りに、ピーナッツ売りの屋台で、マカデミアナッツを一袋買い、ポツリポツリと食べながら、迷路の如き狭い石畳の道を散策しながら、宿に戻った。

マドリッドはスペインではないと、アンダルシアに来る度に感じる。我々のイメージの中のスペインとは、アンダルシアなのであろう。セビリヤには、せめて一ヶ月滞在したい…。

cycle3-2


4 thoughts on “自転車旅行(スペイン・ポルトガル編)3-2

    • コメントありがとう。やる気があればパソコンうまくなりますね。自分にもそう言い聞かせてやってます。ここまで来るのたいへんでしたね。ありがとう。いつも読んでてくれると思うとうれしいです。
      それではまた

  1. とてもロマンチックな描写です。事実そうであったのでしょう。
    水彩画は誰が書いたのでしょうか?日記とぴったりです。

    • 読んでくれてうれしいです。
      絵は私はかいたものです。旅のときは油絵の道具はかさばるため
      水彩でかいてます。

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