自転車旅行(スペイン・ポルトガル編)3-4

1990年3月26日

去り難き町セビリヤをあとに、我々は再び旅に出た。目指すは、ウエルバである。

西へ向かってペダルを漕いだ。道路の両サイドには、名も知らぬ野の草花が美しく咲き乱れている。なだらかな丘がうねりながら、道はまっすぐ伸びる。

途中の町でバルに寄り、一杯のセルベッサで喉を潤す。プロムナードのベンチに座って、町の通りをスケッチした。どこもかしこも絵になるのが、ここアンダルシアだ。人物においても、素晴らしいモデルが揃っている。

夕方、まともに西日を受けて走るので暑い。通りかかった町のバルに飛び込んで、冷たいセルベッサを飲んだ。地味なブレザーに、ハンチングをかぶった老人。ジーンズにストライプのシャツの逞しい青年、子供、赤ん坊、商店のおやじさん、おばさん連中でバルは賑やかだ。空いているテーブルに飲み物を運んで、イスに掛けて喉をうるおし、休憩した。ビノを飲んでいる老人や店内の様子をスケッチした。人々は素朴で、「どれどれ」と僕らのスケッチを覗いたりして、笑っている。

一番描きたかったじいさんが、頼まぬ先に「俺を描け」とモデルになってくれた。古めかしいハンチングの下には、酒焼けした一癖あり気な顔が、気難しい頑固な表情をたたえている。肘をついている傍らのテーブルには、ワインのグラスが乗っている。

これこそ、僕の求めてやまぬモデルであった。しかし、根が照れ屋だから、なかなかぶしつけに「モデルになって欲しい」と頼めないまま、いつもモデルに逃げられてしまう。老人は僕らが描き終わるまで、じっとしていてくれた(時々、見に来たが)。

帰る時に、50ペセタずつ、「餞別だ」と言って僕らにくれた(これは、この土地の古いしきたりだと言う)。僕らが店を出る時、別の老人が、やはり100ペセタくれた。「気をつけてな、アディオス」と老人は言った。

彼らが生きてきた時代、それはスペインの古き良き時代でもあったと言えよう。

夕方7時過ぎ、太陽はまだギラギラしている。国道から横のニレの林の中に入って、テントを張り、キャンプした。ハムとパン、それにパスタのスープの夕食。その後コーヒーを飲んだ。ボンベのスペアがもうなくなったので、手に入るまで節約しなければならない。

8時過ぎ、日が落ちると、すぐにあたりは暗くなり、そして温度は一気に下がる。空にはもう星が一杯だ。

cycle3-4 BAR LA-PALMA HUERVA_SEVILLA-スペイン


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