自転車旅行(スペイン・ポルトガル編)3-5

1990年3月27日

夜明けはまだ寒い。テントを手早くたたみ、出発。N431を一路ウエルバへ向う。西へ西へとペダルを漕ぐ。地平線から太陽が昇り、丘の上の教会と村が白く輝きはじめる。

丘を下ると、小さな町、ラ・パルマが現れた。まだ早いのだが、人はもう動いている。バルに飛び込んで、熱いコーヒーを飲んだ。凍えた体が、ジーンとしびれるようだ

これであと2時間もすると、自転車を漕ぐ僕らは、天然のオーブンの中で喘ぐことになる。これがスペインの気候である。遮るものもない透明な大気を貫いて、強烈な日差しが、すべてのものを光と影に塗り分ける。

戸外で絵を描いていて、スペインはなんと明暗のコントラストの強い国だろうかと思う。それは、この国の人々の気質にも影響している。特にこのアンダルシアは、それが強い。フラメンコと闘牛は、その気質の表れだし、またキリスト教の祭りも実に面白い。

街角に自転車を停め、荷台の上に画帳を置いて、絵を描いた。絵を描き終えた所で、喉が渇いた。すぐ前のバルに飛び込んで、セルベッサでまた一杯。何も言わなくても、付け出しに豆を一皿だしてくれた。

「犬も歩けばバルに当る」と言うくらい、スペインはバルの多い所だ。カウンターで立飲み、というのがこちらのスタイル。もちろんイス、テーブルもちゃんと用意してあるし、どちらでも値段は同じ。セルベッサ(ビール)は、コップ一杯(日本のより大きい)でどこでも100円位で飲める。
コーヒー、ミルク、ワイン、シェリー酒、ビール、ジン、ウイスキーと飲物は何でも揃っている。つまみも何種類も用意してある。アンチョビ、イワシのマリネ、モツ煮込み、カラマレス、カツレツ、イカの墨煮、ローストチキン、トルティーリャ、その他にハム、ベーコン、チーズ、オリーブ、チョリッソ、ソーセージも様々な種類の物が用意されており、安くてうまい。

スペインは昔もそうであったが、酒飲みには天国である。歴史があるだけに、酒飲みのマナーも良い。我が国のように、酒に重税が掛けられていないから、とても安いのである。しかも、非常にうまい。ここでは、昼間から飲んでいるのが当たり前である。そしてまた、酔っ払いをあまり見ない。バルを十軒はしごしたって、2000円もありゃ充分という訳で、僕もいつのまにか、インドにいた頃よりも、酒量がぐっと増えてしまった。

夕方、ウエルバの手前、15キロメートルの地点から国道を外れ、農道に入り、走りながらキャンプ地を物色。少し山の中に入った所に、静かなキャンプ地を見つけた。山の影に入って、涼をとりながらコーヒーを沸かした。モスキートが多い。モスキートに刺されたのは、インド以来一ヶ月ぶりである。沼地があるためだった。

日が沈むと、モスキート軍団の攻撃を受けたが、テントの入口のネットをジッパーで閉めれば、カヤの中にいるのと同じで、どうという事もなく快適だった。押し寄せるモスキートの大群と、すみれ色の夕空に瞬き始めた星々を見ながら、ワインを飲みつつ夕食。すぐ目の前の池からのカエルの合唱を聞きながら、スリーピングバッグの中で眠った。

cycle3-5 ウエルバ-ラ・パルマ辺り-スペイン


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

Current day month ye@r *