自転車旅行(スペイン・ポルトガル編)4-2

1990年3月31日

残念、外は雨が降っていた。止みそうにもない。

出費が痛いが、もう一日Y・Hに泊る事にした(一人1日700円)。

フロントに行き「もう一日泊りたい。雨が降っているので部屋にいてもよいか」と聞くと、OKだと言うので、昼頃までベッドの中でゆっくりごろ寝した。規則づくめのドイツや日本のY・Hでは、こんな訳にはいくまいと思うと愉快である。規則では、朝10時30分から夕方6時まで、外に追い出される事になっているのだ…。

夕方、雨が小止みになったので二人で外出。寒いので、バルでミルクコーヒーを飲んで1時間ねばった。

そのあと買物をして、Y・Hの帰り道、酒飲みばかりが日がな一日ゴロゴロしてドミノにうつつをぬかしている、一軒の小さな酒屋に潜り込み、片隅のテーブルに腰を据え、ビノを飲んだ。

店の棚の上のラジオは、どう見ても1940年代の代物だった。この店自体、そうとう古いものだ。そして、店の女将も客もそれにふさわしい人々だった。古き良き時代がそのまま息づいているかの如く、ここでは時は止まっているようにも感じられた。

僕はカバンから画帳を取り出して、ドミノをする男達をスケッチした。誰もスケッチのじゃまはしない。時々眺めては「これは俺かね?」と聞いたりして、笑っている。片言のポルトガル語で少し話をすると、すぐ打ち解けてくれる。デッサンしてから水彩絵具で色付けして、30分位で仕上げた。「どれどれ、見せてくれ」と客たちは僕の描いた彼らの姿を見ている。「なかなかうまい」と言われて照れる。お世辞にも上手だと言われれば、下手でもうれしいもんだ。客達から何杯もワインをおごられて、店を出る頃には、すっかりホロ酔いかげんになってしまった。

ヨーロッパに来て、自分が最も描きたかったのは、このような画題であった。飾り気のない人々の生活である。自分は流れて止まぬ旅人であるだけに、そのようなものに心を惹かれるのであろう。

cycle4-2 ドミノをする男たち2-サント・アントニオ


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