自転車旅行(スペイン・ポルトガル編)4-8

1990年4月7日

何事もなく夜が明け、内心ホッとした。

7時30分、ホセはもう起きていて、犬をなでていた。家族の者はまだ寝ていて、起きて来る気配もない。ホセは弁当片手に仕事に出て行った。

僕らも自転車に荷物をくくりつけて、家族に別れを告げ出発した。インドの絵ハガキを2枚プレゼントした。彼らは貧しいけど、本当に良い人達だった。僕は1000円位、お金を置いて行こうかと思ったが、それは彼らの気持ちを無にするような気がして、出来なかった。しかし、やはり置いて行くべきではなかったかと、今でも思っている。

向い風が強く、登り下りがきつく、おまけに雨は降ったり止んだりで、今日も難行した。

昼頃、ついにポルトガル西端、ビセンテ岬に到着。ものすごい断崖で、燈台がポツンとあるだけ。実に雄大な景色だった。風は烈風で、自転車に乗っていると吹き倒されるので、押して歩かねばならなかった。マドリッドを出発して一ヶ月、ついにビセンテ岬(カボ・デ・サーオ・ビセンテ)に着いたのだ。地の果てを思わせる岬で、とても寂しい所である。

小屋の陰に、風をさけて昼食。ワイン、チョリーソ、パン、バター、ジャムなどで昼食の後、リスボンを目指していよいよ北上を始める。風は南西の風だから、北上する場合は追い風(ななめ後ろからの)となり、走行は非常に楽になり、面白い程スピードが出るようになって、今までの苦労も忘れた。

しかし、天気の方は相変わらずひどいものだ。雨がひどく降り出したので、ビラ・デ・ビスポの村に着いて、すぐにバルに飛び込んだ。

熱いミルクコーヒーのグランデ(大カップ)を飲み、やっとひとごこちがついた。雨が小降りになるのを待って出発。どこまで行っても見渡す限りの草原と松の林ばかりで、人家も人影もまったくなかった。

夕方、松の林の中の草地にテントを張って、キャンプ。二人とも一日の走行でくたくただ。夕食はワイン、ヒジキの混ぜご飯とカンヅメのオイルサーディン。

食事中ひどい雨が降ったが、僕らが寝る頃には雨は止み、夜空には星がいっぱいだった。

cycle4-8

(5へつづく)

本作は季刊エッセイ雑誌「生活と意見」第5号(春)1996 に掲載されていたものを加筆、修正したものです。


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