続・自転車旅行(スペイン・ポルトガル編)1-1

1990年5月27日(晴れ)

昼前、フミちゃんはストリートへアクセサリーを売りに行き、僕はペンションに残って絵を描き始めた。

昨日、アルファーマでトラックから男たちがワインの樽を降ろして運ぶのに出会って、そのシーンを画帳に急いで下描きしていたのだ。人物を30秒から1分以内に描き、そのあとトラックとバック(背景)をさっと描く。2~3分で終ったが、それでもその時にはトラックも人間も樽を運び終えて、どこかへ去ってしまっていた。

今日は、その下絵にペンでディテールを描き込んで、そのあとウォーターカラーで色つけの作業をした。

速写の練習を毎日つづけた結果、今では、人物の一瞬の動きをなんとか描けるようになってきた。モデルを使わずに自然の状態を描くには他に方法がない。写真をコピーする方法もあるが、その作業はつまらないし、自分には面白くもなんともない。やはりスケッチが楽しい。

しかし、写真はその場で描ききれぬ時、後で描く参考になると思うのでなるべく撮るようにしてる。しかし現像にまわす金なんてないので、まだ一度も現像してない。ビンボーニンの辛いところだ。

しかし、逆に写真に頼らないで描くから、この方が修行になる。

2時間ほどで絵は完成した。この絵を見せたら、ワインの樽を運んでいた男たちはびっくりするだろうと思った。心に焼きついたものを頭の中で描いたようなものだから、イメージが絵の中ににじみ出ている。

描き終えると同時にフミちゃんも街売りから帰って来た。今日は4000エスクード売れたと喜んでいた。とても良い絵だと彼女は気に入ってくれたが、売れるかどうかは別問題である。

チーズとパンとコーヒーで昼食。そのあと彼女はポルトガル語の勉強、僕は昼寝した。

夕方6時、二人でペンションの裏手へ散歩に出かける。

最近なじみになった、いつもの三兄弟の店でコーヒーを飲んだ。彼らの一家は、南アフリカのヨハネスブルグからここに帰って来たポルトガル移民で、父親と三兄弟は英語を話せる。

三兄弟は東洋に憧れていて、日本人の僕らが行くと大変喜ぶ。そして、いつもワインやビールをおごってくれる。それじゃ商売にならんのではないかと思うが、えらく気前が良い。

ジョニーという名の、下の弟はまだ18歳くらい。絵も描く。チベットのタンカ画の絵葉書を一枚あげると、喜んでビールをおごってくれた。断ったがダメだ。

隣のテーブルの人がエスカルゴ(カタツムリ)を食べていたので、注文してみた。ここのは、殻つきのまま茹でたのが、山のように盛って出てくる。肉は柔らかく、苦い。タニシの方がよっぽど美味いと思った。しかし、ポルトガル人ときたらこのカタツムリが大好物と見え、男も女も老人も子供も夢中になって食べている。一皿が、量もたっぷりで150円。街中だとこの3倍くらいはふんだくられる。

空瓶に、白ワインを樽から1リットル(125円)詰めてもらい、店を出た。

店の横は急な坂道で、下から登山電車がゆっくり上ってくる(25円)。下の方には青いテージョ河が海のように広がっており、汽船やヨットが河を往来してる。対岸のメリダスの町が、豆つぶのように見えている。

三兄弟のカフェは、この界隈の社交場みたいなもので、店の周りは、若者、老人、子供らが、立ったり座ったりしておしゃべりしており、下町のムードがあふれている。僕が子供の頃はそんな下町もあったが、今はもう日本中忙しくなってしまって、そういう場所も数えるほどになってしまった。鞄から画帳を取り出して、早速それらをスケッチした。

フミちゃんはもっぱら人物のスケッチをしている。当初に比べ、非常にうまくなってきた。エスカルゴで口の中が苦くなったと言って、彼女は大騒ぎしている。近くの店でウエハースを買って食べたらおさまった。

その辺をブラついてから家に戻る。

9時頃、夕食をとった。

トマトとキュウリのサラダを山盛り、親子丼、マカロニスープというメニュー。いつもながら、三兄弟のとこの樽酒は美味で、1杯が2杯となり、いつの間にか半リットルを空け気分はサイコー。これだから自由旅行はやめられない。

夜2時、消灯して寝た。

cycleNext1-1 LISBOA-ポルトガル


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