続・自転車旅行(スペイン・ポルトガル編)2-6

1990年7月7日(晴れ)

激しい太陽の照りつける旅で、彼女は顔、僕は膝を火傷した。彼女は顔を何時も布でぐるぐる巻にして、濃いサングラスというスタイル(月光仮面)で自転車に乗ってたが、それでもやられた。極度の乾燥と暑さのせいである。

一滴の雨も降らず、毎日雲一つない晴天が続いている。脱水症状をおこしやすいので、我々は無理せず、疲れたらすぐ木陰で休み、オリーブの塩漬けを食べて塩分を補給し、水をたっぷり飲むようにして、注意深く行動した。

カラカラに乾いてバルに飛び込むと、汗が滝のようにドッと吹き出す。冷たいセルベッサがやけにうまい。この国では、コーラよりビールやワインのほうが安い。ビールは日本の5分の1という安さだから、水代わりに飲めるのはありがたい。我が国の酒類は不当に高すぎると思う。

こちらでは、バルがどこにでもあり、朝から晩までやってる。仕事の合間や暇つぶしに、近所の人やドライバーがガブガブと酒を飲んで、おしゃべりを楽しんでいる。まことに羨ましい限りだ。

昨日はレイク(リザベイヤー)からモーラ、モンテモールを経て70kmの山道を走りぬいた。地図で見ると、あと70kmでリスボンの対岸、モンテージョに着く。早く涼しくて湿気のあるリスボンに戻らぬと、火傷はひどくなる一方なので、朝早く国道脇のブッシュの中から出発した。

ベンデ・ノボを経て、昼過ぎピコイシの村に着いた。

バルで休み、水分を補給する。隣のテーブルにいたポルトガル人が「10km先であんたたちを見たよ、この暑さじゃ大変だね。俺はイスラエルで仕事をしたことがあるが、その時はあまり暑くて鼻から水が吹き出したよ」と言ってた。

村の近くで祭りがあるらしく、人々は民族衣装で着飾っていた。これからフォークダンスに行くのだという。こちらではまだフォルクローレは盛んである。エルバシでも見物したが、素晴らしかった。

みんなに見送られて出発。行く手には、焼けつく道がギラギラと輝いて、どこまでも続く。風は向かい風で、上り坂は苦しかった。

夕方5時前にモンテージョに着いた。

フェリー乗り場で1時間ほど船が来るのを待った。ここいらの人々は、いまだに木造の船を使い、旧式なガフリグという帆装を保っていた。それらをカメラで撮っているうちに船が来た。

船はテージョ河を下り、夕方の7時過ぎにリスボン(コメルチオ)の港に着いた。屋台で、スモモとトマトを買って出発。テージョ川の岸に沿って10kmほど下り、そこから西へ向かう。

きつい坂を登って夜9時頃、やっと目的地のモンサントのキャンプ場に到着した。3週間前に比べると、キャンプ場はキャンパーが倍くらいに増えて、静かでなくなっていた。

窓口で係員に、我々のパスポートは期限切れだから駄目だと突っ返され、慌てた。こちらでは、1年有効のパスポートが一般的であり、我々のパスポートが発行されてから1年以上も経っているので、そう言ったのだ。我々のパスポートの有効期限が5年であると知って、向こうも驚いていた。

このキャンプ場には、日本人など滅多に来ない。殆どの日本人旅行者は、ホテルかペンションに泊まっており、キャンプしてるのは我々くらいのものだ。あちこちのキャンプ場でも、一度も日本人に会ってない。日本人サイクリストにもまだ一人も会わない。

有名観光地をめぐるのも良いが、時には観光地でもなんでもない、小さな町や村を訪ねて、飾らない本当のポルトガルを見てほしい。観光地には乞食やかっぱらい、スリ、詐欺師など良からぬ連中も多く、レストランに入れば日本人と見てボラレたり、不愉快な思いをさせられることも度々だが、なんでもない地方の町や村に行けば、そういう嫌な手合いもいないし、ボラれるなんて事もない。人々は親切だし、日本人が珍しくて、色々と語りかけてくる。

問題は接し方だろう。客人としてのマナーを守れば、大概どこでも上手く行くものである。それを、俺は日本人だと威張ってみせたり、逆にやたらと卑屈に出ると嫌われる。人間は、生まれながらにして平等、自由であるという事を理解してないと失敗する。

そしてまた、ポルトガルではなるべくポルトガル語を話すという事もまた、客人としてのマナーである。片言でも、相手の国の言葉を喋ろうとする努力は大切である。僕らはポルトガルに来て3ヶ月だが、ほとんどの用事はポルトガル語で済ましている。ポルトガル語の勉強を始めたのは、ポルトガルに来てからだ。ベルリッツ社発行のポルトガル語(英語対訳)の会話ハンドブックを買って、それで勉強している。

中国旅行中は中国語を、パキスタンではウルドゥー語、インドではヒンディー、スペインではスペイン語を片言ながら話すことで、その国の人々と仲良くなる事が出来た。

最初に数を覚えて、買い物に不自由しないようにするのが大切だ。その後、旅行用語を覚え、旅に不自由しないようにする。それができたら、日用会話を学ぶというやり方をして来た。

前と同じ場所にテントを張った。

コーヒー、チーズ、オリーブ、パンで簡単な夕食を済ませ、くたびれ果ててそのまま眠ってしまった。

テントの中は暑くて、外にマットレスを敷いて眠りなおした。

cycleNext2-6

(3へつづく)


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