続・自転車旅行(スペイン・ポルトガル編)3-1

1990年7月15日(晴れ)

モンサントについて3日間、フェーン現象による熱風と猛暑に悩まされ、水着を買って、プールで泳いだりして暑さを凌いだ程だったが、最近はまた涼しくなった。キャンプ場内には立派なプールがあるが、今はとても泳ぐ気になれぬほど涼しい。

S教授宅で、友達からの手紙や荷物を受け取った。松本さんからの荷物の中身は欲しかったものばかり。全くありがたい。マサイからはドル札(100ドル)のカンパがあった。木下さんからの長い手紙もある。フミちゃんも僕も、目の下が熱くなる思いだった。みんなの友情に感謝して、日本食を久しぶりに味わった。

ポルトガルに来たばかり(4月)の頃と比べて、野菜、フルーツが安く出まわり、種類も多くなって助かる。ポルトガル産の米で炊いたご飯、インゲン、キャベツ、卵を醤油で煮付けたもの、キャベツとニンニクの塩揉み、インスタント味噌汁、それにポルトガル名産のブランデーMACiEiRAで夕食。

MACiEiRAは、安い店だと800円、観光客の多い中心街では1200円で売っている。店によってこんなに値段が違うのも、ポルトガルらしい。いつも地元の樽酒(ブランコ)ばかりでちょっと偏りすぎ。ポルトガルの名酒、MACiEiRA、バガセイラ(スピリッツ)、マデイラワイン、ポルトワインも味わってみるべきだと、なけなしの財布をはたいて買ってみた。日本では4~5000円はするらしい。実に美味なブランデーで、大いに気に入った。

貧乏旅行はしていても、ピンからキリまで見、聴き、味わうというのが、我が旅の哲学なのだ。

贅沢ばかりしていれば贅沢が鼻につく、かと言って、貧乏ばかりしていても偏るので良くない。どん底、中流、上流を自由に往来して見て回るのも、また旅の自由さだと思う。ある時は高級ホテルに、またある時はスラム街の安宿に身を寄せる。そして、その変化を楽しむことが出来るのも、旅の醍醐味ではないかと思う。

東の国境の町エルバシに滞在中は時々、夕方涼しくなってから街へ遊びに行った。

迷路のような路地の中を歩いているうち、小さなプラザ(広場)に出た。観光客の来ない一角だった。そこに小さなレストランがあり、店の外でジイさんがイワシを焼いていた。気に入ったので、店の外のテーブルに席を占めた。地面が傾斜しているため、テーブルも少し傾いている。オヤジがナプキンに包んだフォーク、ナイフ、スプーン、それにカゴに盛ったパンを運んできて、テーブルに置いた。僕らの懐具合は寂しかった。メニューを見て、目玉焼きを一人前注文した。それが一番安かったからだ。他に豆のスープを2つと、ビール、ミルクコーヒーを頼んだ。全部で550エスクード(550円)だった。

急に一群の風がさっと吹いてきて、テーブルからパンとカゴをかっさらっていった。斜面をコロコロと転がってゆくパンを、店のバアさんが笑いながら追っかけ、他の常連らしい客も腹を抱えて笑った。バアさんはすぐに新しいパンをかごに盛って、テーブルに運んでくれた。

そのあとすぐに目玉焼き、スープ、飲み物も運ばれて、テーブルを賑やかにした。目玉焼きのボリュームは2人前もあり、揚げたての美味しいフライドポテトが山のように添えられている。パンもとても見事で旨く、楽しい食事が始まった。そのスープは丼のような金属の器に入っており、舌を焼くほど熱く、量もたっぷりで美味しかった。そのうちバアさんが「イワシは好きか?」と言うので「大好きだ(ムイト ゴシト サルディーニャ)」と答えると、「ポルトガルのイワシは美味しいんだよ。お金は取らないから食べなさい」と言って、焼きたてのイワシを皿に盛ってテーブルに運んでくれた。これでテーブルはいっそう賑やかになり、ビールもずっと旨くなった。

プラタナスの葉陰に、月の光が落ちていた。

店の中からファドの調べが流れ、バアさんはそれに合わせてひと時、楽しそうに踊った。テーブルについている客もそれに合わせて、顔や体を動かしている。子供らは広場の隅で子犬を追っかけてはしゃいでいた。古き良き時代のムードが溢れていた。

路地の東には、まだこのような場所が残っている。しかしまたあの場所に行けるかどうか、自信はない。

帰路、公園に差し掛かるとフェスタの最中で、人々が溢れ、夜店のイルミネーションが賑わいに彩りを添えていた。中に入ってゆくと、中央の広場で、バンドの音楽に合わせてみんながポルトガルダンスを踊っている。僕らもその輪の中に入って、一緒に踊った。色々な夜店を覗き、綿菓子を買って食べた。公園の隅の舞台では、フォルクローレの演奏とダンスをやっていた。民族衣装も美しく、若者と娘たちが器用に踊る。

楽しい、素敵な夜だった。

cycleNext3-1エルバシ


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