続・自転車旅行(スペイン・ポルトガル編)3-6

1990年7月27日(晴れ)

僕達の隣に、ドイツ人の一家が一週間ほどキャンプしている。彼らのキャンピングカーは、30年も前の古い大きなバスだった。一家の主人であるブラウン君の手で、完全にレストアされている。

このクラシックカーにかける彼の情熱は、ひと通りではなかった。彼はエンジンはもとより、車の隅々まで自分の体のように知り尽くしており、もちろん修理は全て彼の手で行われている。ドイツのミュンヘンからリスボンまで来たところで後輪の車軸にトラブルが生じてしまい、修理の為にこのリスボン郊外のキャンプ場に来たのだ。キャンプをしながら修理を始めて、今日で一週間になる。

彼はドイツから部品を飛行機便で取り寄せることが出来たが、錆びついたキングピンがどうやっても外すことが出切す、毎日苦闘している。僕も少し手伝ったが、不可能に近いと思った。あらゆる手段を用いたが、ビクともしない。キングピンを外せぬと、新しい部品を取り付ける作業が出来ないのだ。

丸みを帯びたボディーの曲線はエレガントで、現代の車には無い美しさを感じさせ、ぼくも惚れ込むほどだった。彼はそのクラシックカーを自分で改造して、素晴らしいキャンピングカーに変え、旅をしていた。仕事を休み、一年間この車で旅をした事もあると言っていた。彼はインドを旅したこともあり、東洋を知っていた。

ブラウン君はロングヘア、長身。奥さんは小柄で物静か。一人娘のミランダは4歳のおちゃめな子だ。

ついに彼の根性が勝って、キングピンが外れた。一ヶ月の休みだから、別に焦る事もない。ブラウン君はステレオをかけ、缶ビールを飲みながら修理作業を楽しんでいる。

レジャーの楽しみ方が、我が国とは根本的に違うのを感じる。日本人が一ヶ月のバカンスを取れるようになるのはいつの日であろうか。

cycleNext3-6


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