中国・シルクロードの旅 19

china191989年7月5日

ウルムチに着いて3日目である。ウルムチ駅に着いたのは7月3日の夕方7時頃だった。

地図を駅前で買ってホテルまでの路線を調べバスに乗ったが、満員で身動きが取れないまま降りることも出来ず、乗客が一斉に降りた所で一緒に降りたらそこが目指す紅山広場だった。

まずは露天の屋台の一つに腰を据え、ゆで卵とスイカを食べ、コーヒーを飲んで一休み。11時にならないと暗くならないウルムチではまだ真昼の明るさで、人々で賑わっていた。屋台のオヤジに「紅山賓館はどこか」と尋ねると、「あっちだ」と指さして教えてくれた。

再びリュックを担ぎ、ギター片手に教えられた方角に向かってしばらくブラブラ歩いて行くとホテルが見えた。

フロントでパスポートを見せ、提出された書類にパスポートのナンバーとか国籍とかビザのナンバーや期間、職業、滞在期間、次の目的地、署名、生年月日とかを書き込まされる。ホテルに着く度に入国手続をやらされてるようなものだ。

中国は、切符を買うにも食事をするにもホテルに部屋を取るにも、個人の自由旅行者にとって七面倒臭い国なのだ。パッケージツアーの旅行者は「メイヨー!(ダメ)」という言葉すら聞くことなくスムースに何事も済み、「みんなとても親切だったわよ」なんて言えるのだろうが、実際はそんなものではない。

中国の旅に耐えられたら、貴方は世界中のどの国をも容易に旅する事が出来るであろう。以前はインドの旅に耐えられたら、であったが、今は中国がバックパッカーにとってのヒマラヤなのである。

香港から船で中国の広州に上陸して第一歩を踏み出した時から、不親切と不潔の壁にぶつかった。

港内の中国銀行でまず両替。窓口の係員は、こちらが窓口で両替してくれと言ってるのに無視、平然として仲間と雑談している。窓口を間違えたのかなとあちこち探してみるが、他にそれらしいものもない。

もう一度、今度は係員の不親切と横柄さにいささか頭にきて、大声で怒鳴ってやった。仲間とニヤニヤ笑いながら、人を馬鹿にしたような態度で兌換券をポンと投げてよこした。「両替してやる。ありがたく思え」という態度だ。そこだけかと思ったら、以後どこへ行っても銀行、駅、デパート、食堂、ホテルなど我々外人旅行者と接する係員の態度は同じだった。

ただ一般市民や学生、汽車や船で一緒になった乗客などは親切であり、日本という国に対して興味を示す人が多かった。

不潔さの点においても、随一であるかも知れない。ここに比べればインドなんかずっと快適である。

トイレはどうしようもない。食堂は日本だったら即営業停止、保健所の係員が見たらその場で気絶しそうなのがほとんど。食器もいいかげんにバケツの中で洗ってから真っ黒に汚れた汚い雑布で拭いてくれるので、折角の料理を前にして食欲も半減してしまう。町の食堂での食事の場合、清潔好きな人は神経が擦り切れてしまうだろう。

そういう人は、高級ホテルの一流レストランで食事すべきだ。少なくとも食器を洗ってる所や不潔な調理場を見ないで済むし、痰と唾と(床に撒き散らされた)骨や食べかすなどがテーブルの下や周囲に夥しく散らばった中で食事しないで済む。

しかし、漢族のエリアを遠く離れたウイグル族のエリアは事情が全く異なっていた。

彼らはムスリムであり、彼らの食堂はボロくて古い小さな食堂でも、壁は漆喰で白く塗られ、テーブルにはビニールのテーブルクロスがかけられ、清潔なのだ。

メニューも5~6品くらいがせいぜいで、簡素だし、トマトベースの味もシンプルで、あの漢族のレストランで50~60品ものメニューの中から料理を選ぶ煩わしさはない。

シシカバ、ナン、羊のスープ(塩味)、チャーメン(これは手作りのうどんを茹でてザルで掬ってトマト、オニオン、キュウリ、ピーマン、ニンニク、唐辛子、羊肉と一緒に強火で炒めて塩で味付けしたもの。ナポリタンスパゲッティに似ており非常に美味い)、湯麺(タンメン。これは茹でた麺を丼に入れ、塩味の羊肉スープをたっぷりと掛けてセリのような匂いのするコリアンダーを上から散らしたもの)。とまあこんなのが代表的なもので、他にモツを煮込んだものや、羊の頭をゴロンと茹でたのを大皿に出してくれる店もある。気の弱い人だったら気絶するだろう。

ウイグル人は陽気、音楽やダンスを好む。もちろん漢族よりずっと親切だし、旅人に対してのマナーも心得ている。彼らは遊牧民的な文化を維持しており、肉体的にも精神的にも漢族と非常に異なっている。顔立ちはトルコ系、アラブ系、スラブ系である。文化的にはロシア的なものと中近東的なものが入り交じっている感じで、非常に面白い。

街のあちこちにモスクがあり、ウイグル人の市場に行くとシシカバを焼く煙が立ち込めている。シシカバを焼く炉は日本の焼き鳥屋のと大体同じデザインで、炭の代わりに石炭を使っている。

屋台の主人がニコニコと笑いかけてくる。別の店でナンとビールを買ってきて、シシカバブと一緒に食べるという事を覚えた。

鉄の串に羊の肉編を刺してある。炉の上に乗せ、唐辛子、塩、スパイスを振りかけながら焼く。

片隅に置かれた古ぼけたテープレコーダーからウイグルの民族音楽(中央アジア、中近東の音楽に近く、漢族の音楽とは全く異なる。日本の演歌は漢族と似ている。日本の民族音楽に似たものを中国とビルマ、ベトナムの国境に住む少数民族の間に私はいくつか認めている。)が流れ、とてもいいムードである。


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