やっぱしエエな、旅は 2

2カザフ族の男は精悍な顔立ちで、馬術に長けている。黒いハンチングをかぶり、黒い乗馬靴を履き、片手に皮の鞭を持っている。

街道内の食堂で飯を食っていると、馬を食堂の入り口の柱につなぎ、長靴をドカドカ鳴らしてカザフの男達が店に入ってきた。アンソニークイン氏とリーバンクリーフ氏(西部劇の悪役スター)のおでましだ。

河の鞭をテーブルに置き、椅子にドカッと腰を下ろし
「テメエはどこのどいつだ?」
てな感じでこちらを見ている。

ハンチングの下の茶色の瞳は鷹のように鋭い。鞭の柄には鋭利なナイフが仕込まれており、喧嘩の時には使用するのだ。

ここでビビッて、皿の上でフォークをカチカチ鳴らしては男がすたる。片手で帽子のひさしをちょっと持ち上げて
「ヤクシミシス(こんにちは)、俺はヤポンルック(日本人)だ」
と言う。

日本人と聞いて、彼らは目を丸くする。こんな所に来る日本人なんて初めてだから無理もない。これが日本人か!という感じで、あとは大変である。

「寿司食いねえ、酒飲みねえ」
という事になる。

ところが、こちらでは寿司は羊の肉だし、酒は60度の白酒ときている。

38度の酒もあるが、そのラベルには低度38度と書いてあるくらいだ。60度の酒を小グラスに注いで、ストレートで飲むのである。一体どういう胃袋をしているのだろう。化け物だ。

アンソニークイン氏が、親しみを込めてグラスに60度の白酒を1杯注ぎ、
「さあ飲みねえ」
と差し出してくれる。

ここで怯んでいては男がすたる。一気にグイと飲む。

火を飲んでしまった感じだ。まともに飲める代物じゃない。テーブルの上にあった冷たい茶をガブガブ飲んで火を消す。少し甘ったるいような感じだが、なかなかうまい酒である。

こちらも気分が良くなり、旅の時はいつも持ち歩いている愛用のギターを取り出し、フラメンコを一発ジャラジャラン!と弾くと、音楽大好き人間の彼らは大喜びだ。

シンアルタイの村は、スイス・アルプス地方と同じくらい美しい所である。人々は素朴で親切だ。

この地がいつまでもこのままであってほしいと思うのは、旅人のエゴだろうか?


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