やっぱしエエな、旅は 3

31989年7月14日

今日は部落の祭りの日である。

朝、外に出ると、あちこちの家の前で羊を殺して解体しているのでびっくり。爺さんが子供に手伝わせて、またたく間に羊の皮を剥ぎ、その皮の上で解体する。内臓を取り去ると、羊の片足を木の枝から吊るした。カギに引っ掛けてぶら下げる。

そのままにしておいても1日や2日は腐らないから、必要な分だけ切り取って料理するという方法をとっている。

僕らも近くの家に招待された。家の中はアラブ式の飾り付けが掛けている。床には立派な絨毯が敷かれ、テーブルには自家製の菓子やパン、羊の料理が山のように盛ってあって、お茶を飲みながらそれらを手で掴み取り、食べる。羊はとても美味しかった。

そのあと、村中の男たちが馬に乗って一頭の羊を奪い合う競技を見た。

 

ある友人への手紙 1

前略、その後いかがおすごしですか?

今日は7月14日。僕らはイーニンというロシア(カザフ共和国)との国境の町に滞在してます。

病気と列車の事故などで成都を出発できたのは6月30日でした。思えば、成都には3週間も滞在した事になります。

3段ベッドの2等寝台車で3泊4日、砂漠地帯を走り続け、7月3日の夕方にウルムチに到着しました。ウルムチは昼間は暑いけど北海道の夏のような感じで、空気はさらりとして朝夕は涼しくてしのぎやすい所でした。

ウイグル人のバザールはアフガニスタンのカブールにでもいる感じ。シシカバーを焼く煙が流れ、美味しいハミクワ(ハミウリ)が山と積まれ、とても中国にいるような気がしませんでした。ここまで来てしまうと中国人もわずかで、ほとんどが異民族です。

中央アジアは期待通り素晴らしい所です。我々の旅も今までになく楽しいものとなり、やっとほんとの旅が始まったという次第です。

ウルムチからまっすぐカシュガルに行く予定でしたが、ウルムチのホテルで一緒だった職業画家の西濃さんがサリム湖はとてもキレイだよと言うので、すぐ予定を変えて僕らは7月9日の未明にウルムチを出発。イーニン行のバスでサリム湖へ向かいました。

天山北路を走り続けて途中チンホーの旅社に泊まり、次の朝早くに出発。平地から高原地帯に入り、昼前にサリム湖畔に差し掛かり、運転手に頼んで旅社の前で降ろしてもらいました。

バスが行ってしまうと辺りは静まり返り、湖からの快い風がそよそよと吹いてました。今までの暑さが嘘のようでした。湖の周囲は浅緑色の大草原。湖の水平線のかなたには雪を抱いた青いアルタイ山脈が連なり、天山北路がうねって峠の方に続いていました。

僕らはしばし天山北路の道端に腰を下ろし、景色のあまりの美しさと雄大さに茫然として、この街道がかつてシルクロードとして栄えていた頃の事に思いを馳せました。

大草原のパオが幾つか見え、羊の群れや馬や牛が草を食んでいました。そのうち、馬に乗ったカザフ族の男達が街道の向こうからやって来て我々の前を走り抜け、草原の方に去って行きました。黒っぽいハンチングの下に光る鷹のように鋭い茶色の瞳、黒い革の乗馬靴を履き、片手に鞭を持って馬を走らせる彼等との出会いはとても感動的でした。

湖畔に一軒きりポツンと建っている旅社に2日泊まりました。

トイレは50m先にあり、水道が無く、顔は湖で洗いました。湖の水は青く澄んで冷たくて素敵でした。中国に来て、泥のように濁った水しか見た事が無かったので感激でした。


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