やっぱしエエな、旅は 4

4ある友人への手紙 2

近くに泥で造られたアラブ風の軒の低い家が5、6軒あって、そのうちの一軒が清真(ムスリム)食堂でした。メニューは3種類だけ。ここでいつも食事しました。(他になかったから)

大抵ナンと熱いお茶、又はバター茶(生クリームに塩とお茶をかけたもの)、それと羊肉、トマト、ピーマンを炒め塩で味付けした野菜炒め。他には皿うどん(うどんに同じ野菜炒めをかけたもの)があるだけ。(イリ地方を旅している間は他の料理は期待できない。他に食べたのはコイメン(羊のスープ)とウイグルパン、コイコシ(羊の塩ゆで)ぐらいだ。)

中国人のレストランが30~50のメニューがあるのに、ムスリム・レストランはどこへ行ってもせいぜい3~5種類のメニューしかなく、このうち料理と言えるのは羊とトマトとピーマンを油で炒め塩で味付けしたものだけで、イリ地方ではシシカバもほとんど見ません。

ここのレストランは旅人や草原のパオから馬でやって来た人々の社交場で、彼らはとてもナイーブで親切でした。買い物や用事がある大草原に住む人々はここまで馬に乗って来て、ここに馬を預けてバスやトラックをヒッチしてイーニンの町まで行くのです。

イリ地方(天山山脈、カザフとの国境地帯)、及びアルタイ地方(アルタイ山脈、ロシア及びモンゴルとの国境地帯)はまだ一般旅行者が立ち入れる状況でなく、一部の冒険的なバックパッカーが旅している程度で、実に素晴らしい所です。

今は昔と違って非常に詳しいガイドブックが沢山あって、旅行者はガイドブックに頼り過ぎの傾向があり、逆にガイドブックに載っていない場所へは不安で行く事が出来ない者が多いようです。同年代の日本人旅行者のウバさんは「今の奴らはガイドブックの精度(正確さ、詳しさ)の事ばかり問題にしてる。街から街へ移動してるだけだ。冒険心や根性に欠ける」と怒っていました。

たしかに20年、15年前の旅行者は冒険心に富み、困難をものともしない猛者が多かったと思うけど、今の若い旅行者の中にもそういう人達はいます。ただイージーな旅行者が増えたのは確かだし、カルカッタとかゴアとかカトマンズはすっかりリゾート化し俗化してしまってるようです。

しかし、まだガイドブックに載っていない土地へ行けば、素晴らしい経験が出来るのです。旅の仕方でいくらでも面白い旅は可能です。

夏が終わるまで、僕らはイリ地方及びアルタイ地方を旅する事にしました。あまり詳しくはないけど、日本から持って来た地図が一枚あるのでそれで十分だと思ってます。カシュガルへは秋に出発する事になると思います。

シンアルタイの村の谷間には、蜂飼いの回族の白いテントやカザフ族のパオがあちこちに思い思いに立っており、僕はスケッチブックと水彩絵具を持って毎日出かけていってスケッチしてます。カメラだと嫌われる場合も多いけど、絵を描いてるとゆっくり彼等を観察できるし、彼らの方から興味を持って近づいてくるのでなかなか楽しいです。僕が絵を描いてるのだと分かると、彼等も安心して打ち解けるのが早いです。

村の人達ともすっかり友達になり、祭の日にはあちこちの家に呼ばれご馳走になりました。

ここでは馬に乗った男達が一頭の羊を奪い合う競技も盛んで、シンアルタイにいる間3回くらい見ましたがとても凄かったです。彼等の馬術は天性のもので、凸凹の激しい土地を全速力で走るシーンは圧巻でした。

今でもこういう生活をしている人々がおり、土地があるのだと思うと嬉しくなります。シンアルタイの村はスイスアルプスに負けぬ美しい土地です。人々は素朴で親切です。

このような土地がいつまでも変わる事なくそのままであってほしいと願うのは、旅人のエゴでしょうか?


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