やっぱしエエな、旅は 5

51989年7月21日

シンジャンに来てからほとんど快晴である。雨が降ってもすぐ止むので、この辺の人々は傘を持って行かない。

伊宇館というホテルに滞在している。このホテルは森の中にあって、涼しい。

7月14日にシンアルタイから中国人のジープに便乗して伊宇にやって来たチョーさんは、中国のお巡りさん。車はパトカー、おまけに彼はスピード狂と来ていたので、ホテルに着くまで生きた心地がしなかった。

途中で自転車の少年をハネてしまい、大騒ぎになった。幸いにも少年はかすり傷で歩けるようだったので、事なきを得た。我々のジープも、もう少しで道路脇の溝に突っ込むところだった。そうなっていたら、かなりスピードを出していたからどうなっていたか分からない。

自転車の前輪はメチャメチャ、お互いに悪いという事で少年には5元与えただけ。フミちゃんが気の毒がって、こっそり50元やった。

これで交通課勤務だというからビックリ。しかし、乗せてもらえる手前、彼に対してあまり非難がましい事は言えなかった。彼は親切な人であったので、余計である。

伊宇に着いたのは夕方の3時頃で、彼の家に案内され、昼飯をご馳走になった。中国人の家庭に招待されたのは初めてである。

アパートで、玄関、トイレ(水洗式)、シャワー、台所、客間、それに部屋が3つくらいある。なかなか小奇麗で、日本のアパートにいる様な感じがした。

両親と奥さんと子供が1人という家族構成である。彼は30歳ちょっと過ぎ、お父さんは50代の方で役所に勤めているようだった。

こちらの人は、すぐにアルバムを見せたがる。アルバムを見せてもらいながら、筆談をした。

そのうちに料理がテーブルに運ばれ、食事が始まった。彼とお父さんが一緒に食事をしたが、他の人は食事に加わらなかった。ビールと強い酒を勧められた。

お父さんは僕の親戚のおじさんにそっくりで、どっちかと言うと静かな文官タイプ。日本と中国の物価や給料、旅行の話をしたり、写真を撮ったりした。

食事の後、彼がホテルまで送ってくれ、宿泊の交渉までやってくれた。伊宇牢館は高すぎるからと、彼の知っている星屋館に泊まる事になった。疲れ果てて部屋に入り荷物を下ろして、そのままベッドで眠ってしまった。

1時間くらいして、誰かがドアをノックするので開けると、受付の女の子だった。悪い予感がした。彼女は、ホテル代としてあと78元不足であるから、それを払うようにと要求してきたのである。

これには私も驚いた。こういう事は、中国ではよく起こる事ではあるが、話を良く聞いてみると、我々は外国人であるから30%の割増を払わねばならないと言うのだった。

我々の宿泊料は26元であるからその30%は7.8元であると言っても、分かってもらえなかった。78元は300%である。相手が計算違いをしているのだが、自分は間違っていないと信じ込んでいるので、いくら説明をしても無駄だった。

26+78=104元も払わされたんではたまらない。最初の館へ行く事にして荷物をまとめていると、彼女が英語の話せる中国人を連れてきた。

その中国人は計算が出来たので、彼女が間違っており、我々が言っている事が正しいのだと説明してくれたので、ようやく彼女も自分の誤りに気が付いたのである。しかし、部屋代は26元から33.8元になる事に変わりはなかった。

それでも、水洗トイレとシャワー付きの部屋だから特に高い訳ではないのと、移動も面倒なのでそのまま泊まる事にした。

しかしこの受付の女の子はなかなか良い娘で、美人で親切だった。普通は「メイヨー」の一言で片づけられるのがオチなのだ。

このホテルにはレストランはあったが、団体客が泊まる時しかやってなかったので、ほとんど閉まっていた。それで僕らは、近くのもスリムの小さな食堂でいつも食事をした。

ここのオジサンは5、60歳くらいで、父が日本人だと言っていた。その父は子供の時亡くなったと教えてくれた。日本兵だったかもしれないが、詳しい事は分からなかった。その彼の店に来た日本人は我々が初めてらしく、大変喜んでくれた。別れる時に500円コインをプレゼントした。

彼は、帰る事も行く事も出来ない父の祖国の事を想い、涙ぐんでいた。日本へ行きたいが、政府は許可してくれないし不可能だと言っていた。中国には、こうした戦争の落し児がたくさんいるのだ。戦争の爪痕を感じないわけにはいかない。

彼はお茶を注いでくれ、菓子を勧めてくれた。そして、食事の料金はどうしても受け取ってくれなかった。


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