旅の記録 印度編 7-2

india7-2インド料理は押しなべて芸術的、そして完全にアブストラクティブである。彼らは何十種類ものスパイスをマジシャンの如く使いこなす。そして作られた料理は見たところドロドロのヘンテコなものだが、口の中に入れた途端、強烈で暴力的で過激な刺激が、美食に倦んだ舌を叩きのめすのだ。

インドカレーの味覚、それは正に爆発である。

スパイスの宇宙の中でバラバラになった我々の味覚が、切れ切れに何か訳のわからないものを感じ取る。それは精神的ですらある。食と美が混然と混じり合う世界がインド料理の中に存在する。

中国料理の食は、食に尽きて美に混じり合うという事はない。世界に認められる中国料理でさえ、インド料理の前にはきわめて単純な在り来たりのものでしかない。僕は中華料理は好きだが、中国を旅してる間3ヶ月間毎日いろいろな料理を食べたが、何か物足りなさを覚えたものだ。

家庭料理を食べると、いつも北海道の戸外で食べたジンギスカンとかアキアジの鍋を懐かしく思った。海に潜って岩から剥がした牡蠣を生で食べたり、夜、海岸のジャングルを探し回って捕まえたヤシガニを塩茹でにして食べたりしたのを懐かしく感じた。

インド料理はその点、あまりにもアブストラクティブであるためか結構鼻にもつかず、毎日食べることが(自分には)できる。

しかし、大方の旅行者、外国人はインドのスパイシーな過激な料理が苦手のようである。ダラムサラに来て、チベット料理にありついてみんなホッとするのだ。チョウチョウ、モモ、ツクパ(ラーメン)、チャーハン、スブタ、そのようなものがチベットレストランでの人気メニューである。

ダラムサラではウイスキーや冷たいビールを売る酒屋(すべてインド製)もあり、夕食前にいつも僕はウイスキーを一杯やるのが楽しみだ。

ダラムサラは小さな山あいの町だが、インド料理とチベット料理とアルコール、そして上質のチャラスに恵まれておりそういう点からも私はこの町が好きである。

プリで朝食を済ませた後、少し散歩。ヒマラヤはすっかり雪化粧して、ダラムサラの町のメインストリートの上に覆いかぶさっている。どこかスイスのアルプスによく似た感じである。

羊飼いが羊を引き連れて通りを横切る事もあるが、交通量がとても少ないので問題にならない。散歩していてよく羊飼いの少年に会う。学校には行ってないみたいだ。粗末なフェルトの服を着て、手には杖を持っている。

僕の家の窓から見えるすぐ近くの山に住んでいる。石造りの家、点々と散らばって斜面で草を食んでいる羊の群れ、岩にかけてそれを見守る羊飼いの少年、そうした風景によく出会う。ここではスケッチの材料に事欠かない。

午前中、フミちゃんは先生の所でシタールを習っている。

僕は近くの食料品店に行って、インスタントカレーラーメンとロウソクと石油を5リットル買った。その後、家でスリナガルのスケッチに色付けをした。

ハウスボートや人物は簡単に描けるが、水面の彩色は慣れてないせいもあって難しい。しかしそれなりに面白い。湖や海で水面をよく観察して、水と光と色の関係を研究する必要を強く感じる。


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